金価格は今後も上がり続ける可能性が高い

――ここ数年、金価格が大きく上昇しています。その背景にはどのような要因があるのでしょうか?

チャン 「有事の金」と呼ばれるように、金は非常事態が起きた際に逃避先としてニーズが高まる傾向にある資産です。近年は、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢、トランプ関税などの影響で、市場の不透明性が続いていますが、その資金の逃避先として金価格が大きく上昇しました。

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
ゴールドストラテジスト
アーロン・チャン氏
 

稲 さらに金の需要を細かく分類すると、主に①宝飾品需要、②工業用品需要、③投資需要、④中央銀行からの需要の4つに分けられます。このうちここ数年で特に伸びが大きいのが、④の中央銀行からの需要です。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアが保有する米ドル資産が凍結されました。これを受け、米国と対立する可能性のある中国などが、外貨準備における米ドルへの依存を減らし、代わりに金を購入する動きを加速させています。特に2022年からの3年間は、毎年1000トンを超える、過去に例のないペースで購入が続いています。

世界の情勢が不安定で、米ドルの信任が揺らぐ局面では、自国の通貨価値を守るための資産として金の重要性が高まります。この流れは、世界各地の紛争が解決し、米ドルへの信頼が回復しない限り、大きくは変わらないと考えています。

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
常務執行役員 金融法人営業部長
稲寛彰氏
 

――一方で、これほど価格が急騰していると「バブルではないか?」「一過性のものでは?」 といった懐疑的な見方もひろがっています。その点はいかがでしょうか?

チャン バブルではないと考えています。需要については、世界情勢が改善しない限りは下がることは考えにくいです。また、供給については、金は希少性の高い資産です。地球上に残された採掘可能な金の埋蔵量には限りがあります。供給が先細りしていくことを考えれば、価格は上昇していくのではないでしょうか。歴史的に見ても、金取引が自由化されてからの54年間、金の価格は年率平均で8.8%ほど上昇し続けています。

稲 金は、株式と違って企業価値の評価(バリュエーション)のような概念が当てはまりません。価格は純粋に需要と供給のバランスで決まります。希少性が高く、需要も底堅いうえに人類の長い歴史において価値を認めてきた特別な資産であることも踏まえると、株価のように暴落することは考えにくい資産です。