約3割が「収入増」見込むも、住宅予算への反映は限定的

調査では「今後の賃上げと住宅予算への影響」についても質問をしている。結果は以下のとおりだ。

今後の賃上げと住宅予算への影響

今後の賃上げと住宅予算への影響を表した図表
 
出所:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査 【住宅ローン利用予定者調査(2025年4月調査)】」
 

今後の収入の見通しについては、34.6%が「増加する見通し」と回答した。政府の賃上げ政策や企業の業績改善による賃金上昇の動きを反映していると考えられる。一方で「あまり変わらない」と答えた人は50.7%と半数を超え、「減少する見通し」という回答も14.7%あった。

しかし特筆すべき点は、収入増加の見通しが住宅予算にはあまり反映されないことだ。続く質問では「住宅予算の見通し」について聞いている。結果、「あまり変わらない」という回答が74.4%と多数を占めた。「増加する見通し」は13.8%にとどまり、「減少する見通し」も11.8%となっている。

つまり収入が増加しても、その分を住宅予算に充てるのではなく、他の支出や貯蓄などに回す傾向があることを示唆している。

金利上昇と賃上げのはざまで揺れる住宅購入計画

調査結果を総合すると、金利上昇と賃上げという経済環境下において人々は住宅購入計画を練り直す傾向にあるようだ。中でも金利上昇に対する反応は一様ではない。予算を減らす方向で調整する人がいる一方で、「今後さらに金利が上がるかもしれない」という懸念からか取得時期を前倒しするつもりの人も同程度存在する。住宅購入における「待つべきか、急ぐべきか」という永遠の課題に、これまでの超低金利下という環境からの正常化という新たな変数が加わった結果といえそうだ。

また、収入増加の見通しがある人が3割以上いるにもかかわらず、住宅予算の増加を見込む人は少数にとどまっていることも注目点だ。将来の経済不安や金利上昇リスクへの警戒感が住宅購入への慎重な姿勢につながっていると考えられる。

変化する環境下、納得の行く住宅購入を

自身が思い描く理想の家のイメージがある人もいることだろう。「家が欲しい」という希望と現実を照らし合わせ、金利動向と収入見通しを見極めながらライフプランに合った判断をすることがこれまで以上に重要になっている。

調査概要 調査名:「住宅ローン利用者の実態調査 【住宅ローン利用予定者調査(2025年4月調査)】」 調査主体:住宅金融支援機構 公表日:2025年6月27日 調査期間:2025年4月30日~5月12日 調査対象:今後5年以内に具体的な住宅の取得予定があり、住宅ローン※を利用予定の1500人(全国20歳以上~70歳未満、学生・無職除く) ※借換、リフォームローン、土地のみローン、投資用ローン除く)