美人投票とSNS

 株式投資でとても重要なこととして、ケインズの「美人投票」の話があります。美人投票とはミスコンのようなもので、投票で1位になる人を当てるゲームです。そこでは本当に美人かどうかよりも、他の参加者がどのように行動するかを読むことが重要になります。

 この考え方が記載されたケインズの代表作『雇用、利子および貨幣の一般理論』の出版から間もなく90年が経ちますが、その考え方は色褪せるどころか一層重要性を増しているように感じます。

玄人筋の投資は新聞紙上の美人コンテスト、参加者は一〇〇枚の写真の中から最も美しい顔かたちの六人を選び出すことを要求され、参加者全員の平均的な選好に最も近い選択をした人に賞品が与えられるという趣向のコンテストになぞらえてみることもできよう。このようなコンテストでは、それぞれの参加者は自分がいちばん美しいと思う顔を選ぶのではなく、他の参加者の心を最も捉えそうだと思われる顔を選ばなければならない。

 インターネットの登場により、株式投資に関する情報は巷に溢れるようになりました。

そして、情報が多いほど、人の心は揺り動かされます。SNSが隆盛を極めてからそれはさらに加速し、虚実混じった情報があらゆる人のスマートフォンに一斉に流れ込むのです。

 波野がトリリオンバイオの投資に突き動かされたのも、SNSからでしたね。SNSはうまく使えばとても有益な情報を見つけられる場所で、私自身も活用している情報源です。

 一方で、書かれていることの真偽を見極められなければ、途端に誘惑はびこる迷宮へと姿を変えます。

 その特性を利用して、「悪い人」は美人投票を自分が有利になるように進めようとします。いわゆる「煽り」ですね。昔から水面下で情報を流し株価を吊り上げる「仕手筋」と呼ばれる人は存在したようですが、今はそれがインターネットを通じて表に出てきている状況です。

 もちろん、そんなことをしなくても「美人投票」のゲームが上手で、短期で利益を出せる人はいます。メディアで見る著名な投資家もそうかもしれません。一方で、それができるのは類まれなるセンスと、相当な努力が必要なことも間違いありません。

 人の心は揺れ動きやすいものですから、美人投票で一時はトップを走っていた銘柄が、次の日には最下位になってしまう、ということも珍しくありません。常に状況を観察し続けなければならないのです。

 そんな移ろいやすい「美人投票」の株式市場ですが、運よく株価が上がってくることもあります。しかし、それで「よかった」とはならずに、さらに悩みが深まるのが株式投資の難しいところです。上がった株を売るべきか、はたまた持ち続けるか、誰も教えてくれません。

 もしかしたら、上がったのは偶然タイミングがよかっただけで、再び下がってしまうかもしれませんよね。そう考えると、いよいよ夜も眠れなくなってしまいます。

 果たして、上がった株は売って利益確定するべきなのでしょうか。それとも、ほったらかしにしていた方が案外うまくいったりするのでしょうか?

 その答えを知りたければ、書籍をぜひお読みください。