下がっている株を売るべきか?
この話は、波野がいきなり投資で大損するところから始まります。これだけ損を出したら、多くの人が投資をやめてしまうのではないでしょうか。波野も、診療所に出会わなければ後悔の念に苛まれたまま投資から遠ざかっていたかもしれません。
しかし、投資は失敗してからが本番です。私自身も投資に身が入り始めたのは、手痛い失敗を経験してからです。現に私たちのところには「なかなかうまくいかないから、本格的に勉強してみたい」という方がたくさんいらっしゃいます。
そのような方の最初のハードルとなるのが「損切り」です。多くの方が、株価が下がっている銘柄を売却せずに「またどこかで上がるのではないか」という淡い期待を持って保有を続けています。その様子は、具体的な何かに期待しているというより、何となく風向きが変わるのではないかという「神頼み」に近い状況です。
こうなってしまうと、投資はまさに運を天に任せた「ギャンブル」となります。ギャンブルそのものを否定するわけではありませんが、そのままでは投資がうまくなる可能性はほとんどありません。
一時期、私のところに多く寄せられた相談に、ユーグレナ(証券コード:2931)に関するものがあります。「ミドリムシ」から作られた食品や再生燃料でメディアを賑わせた企業です。
企業の理念としては素晴らしいのですが、ビジネスとしては優位性を築くことが難しかったようで、2017年9月期に最高益を記録してからは6期連続の赤字が継続しています。株価はそこから現在に至るまで半分以下になってしまいました。
どの企業、どんなビジネスがうまくいくか、投資を長く続けていても正確に判断することは難しいものです。しかしながら、ユーグレナのケースでは、さすがにここまで赤字が続いていると「何かが間違っていた」と判断する必要があります。
ちなみに、ユーグレナのような新規性の高い企業やバイオ医療系の企業は、人々の夢を誘いやすいのか、異常に割高な水準まで株価が釣り上がることも珍しくありません。そして株価が上がれば上がるほど、多くの投資家を引き付け、高値づかみする初心者を生み出すことになります。
ユーグレナの今後の行く末を正確に見通すことは容易ではありません。しかし、最高益を出した時点で「このまま業績が伸び続けるだろう」と判断して買っていたとしたら、当時のあなたの判断は間違っていたことになります。
投資が本当に上手い人は、自分の間違いを認めることに躊躇しません。それができるからこそ、投資や自分自身に正面から向き合い、投資家として成長することができるのです。
損切りを提案されたお客様も「言ってもらえてよかった」と、すっきりされるようです。もしあなたがモヤモヤしているようなら、思い切って売ってみてはいかがでしょうか。一旦リセットすることで、冷静に自分と投資対象を見つめ直すことができるはずです。