経常益600億円へ2000億円を投資 株主還元も強化、配当性向40%へ

続けて、より長期の見通しも押さえておきましょう。

九電工は25年4月に新しい中期経営計画を公表しました。30年3月期を最終年度とする5カ年計画で、期間中は5年で2000億円を投じます。

2000億円の内訳は、成長投資およびM&A投資に800億円、ストックビジネス投資に800億円です。残りは設備更新やDX・研究開発に振り向けます。成長投資は、カーボンニュートラル関連事業やエネルギー貯蔵装置、データセンター関連事業などを視野に入れています。

一方、ストックビジネスとは継続的な収益が期待できる事業のことです。景気の影響を受けづらい事業を育てることで、安定収益の拡大を目指します。九電工は既存の再生エネルギー事業や施設運営事業の拡大に加え、CRE(企業不動産)の利活用や新規投資を通じ、ストックビジネスを成長させる考えです。

これらの投資を通じ、30年3月期に経常利益600億円、ROIC(投下資本利益率)は10%以上を目指します。なお、目標としての設定は見送ったものの、売上高は6000億円程度を想定します。

【中期経営計画の主な財務目標(~2030年3月期)】

・経常利益:600億円(2025年3月期実績:444億円)
・ROIC:10%以上(同9.0%)
・(参考)売上高の想定:6000億円程度(同4739億円)
※売上高は目標の設定なし

出所:九電工 中期経営計画

前述の2000億円の投資とは別に、5カ年で800億円以上を株主還元に振り向けます。これに伴い株主還元方針も強化しました。従来は配当性向で25%を目標としていたところ、同40%へ引き上げます。さらに、前期比で配当金を維持または増額させる累進配当を導入しました。また、自社株買いも機動的に実施するとしました。

株主還元の引き上げは、目標として掲げるROICの向上にも貢献するでしょう。九電工は事業への投資と株主還元の両輪を回し、企業価値の拡大を目指します。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)