人的資本経営における資産形成支援の役割

なお、Shinesのような仕組みを通じて企業が資産形成支援を行うことで従業員の会社に対するエンゲージメントが向上することも調査結果から示されている。「会社への信頼感が高まった」「福利厚生が充実していると感じる」と回答した割合が利用者では85%に達し、非利用者の回答率(66%)を大きく上回った。

また、別の質問では約6割以上の社員が「資産形成サービスが就職・転職の意思決定に影響する」と回答。ほか、20代・30代に聞いた質問では、利用者の方が非利用者より業務への前向きさが9ポイント高く、モチベーション向上に寄与していることが示された。

こうした背景についてNECで新規事業開発、金融事業に長く携わる岩田太地氏(みらい価値共創本部主席ビジネスプロデューサー)は、単に資産形成のサービスを提供するだけではなく、エンゲージメントに資することが重要だとの見解を示す。

「当社では2025年度にエンゲージメントスコアを50%に高めることを中期経営計画の目標としており、エンゲージメントの高まりに伴って株価も上昇しています。社員としても会社のために働きがいが高まることが業績につながっている実感があります」(岩田氏)

AI活用で退職金受け取りをサポート

また岩田氏は、「今後、個人向け金融サービスを拡大するにはAI(人工知能)の活用が不可欠」とも語り、開発中のチャットボットのデモンストレーションを提示。企業の退職金制度に特化したこのチャットボットは、AIが同社の退職金規約を理解した上で、退職金制度の仕組みや計算方法についての質問に答える仕組みとなっている。

退職金制度については40代、50代ではあまり気にせず過ごし、55歳や60歳くらいになって急に気になるというケースも多いもの。20代や30代のうちから理解してもらえるような分かりやすいものにすることが主な目的の一つだ。チャットボットでは情報提供だけでなく、年収や勤続年数など自身の情報に基づいて退職金額を試算することも可能になるという。AIが規約のどの部分から情報を取得したかも表示され、利用者の納得感を高める工夫もなされている。