「国債の発行が増えたとしても、基本的に日本国内でファイナンスできるから安心」は過去の話…
しかし、今の日本に選挙対策で3兆円もの資金を出せる余裕があるのでしょうか。
まず、ソブリン格付から見ていきましょう。ソブリン格付とは、中央政府が発行する債券の元利払いに関する能力を示すものです。一般的には、「AAA」を最上級格付として、「AA+」、「AA」、「AA-」、「A+」、「A」、「A-」、「BBB+」、「BBB」、「BBB-」……といった段階で表示されます。
そして、「BBB-」までを投資適格債といって、投資してもまあまあ安心して保有し続けられることを意味しますが、「BB+」まで落ちると、今度は「投資不適格」という烙印が押されます。投資不適格とは、償還される前にデフォルトといって、元利金の返済が滞るリスクがあることを意味します。
では、現在の日本国債の立ち位置はどうなのでしょうか。
格付会社は複数あります。主なところではS&P、ムーディーズ、フィッチ、R&I、JCRです。このうちR&IとJCRは日本の格付会社です。
それぞれの日本国債の格付がどうなっているのかというと、
S&P・・・・・・A+
ムーディーズ・・・・・・A1
フィッチ・・・・・・A
R&I・・・・・・AA+
JCR・・・・・・AAA
このように、格付会社によって差があります。
では、どれを見るのが正しいのか、ということですが、よく言われるのは、日本の格付会社は海外のそれに比べて甘い、ということです。JCRに至っては、今でも日本国債の格付を最上級のAAAにしていますが、これはさすがに今の日本の財政事情から考えると、「甘すぎる」と言わざるを得ないでしょう。
また、日本国債の格付を見るうえで大事なのは、海外投資家がどう考えるかということです。なぜなら、日本国債についても徐々に海外投資家のプレゼンスが高まってきているからです。
日本の財政赤字については、「さらに国債の発行が増えたとしても、基本的に日本国内でファイナンスできるから安心」と言われます。が、これは日本国債を保有している投資家が、基本的に日本の預金取扱機関、保険会社、年金基金、公的年金が中心だった時代の話です。
確かに、2010年3月末の国債保有の構成比を見ると、海外投資家の保有比率は5.5%であり、残りはすべて日本国内の預金取扱機関、保険会社、年金基金、公的年金などによって保有されていました。
このように、日本国債の大半が国内の投資家によって保有・購入されている限り、さらに財政出動が増えて国債をたくさん発行することになったとしても、必ず買い手がいるからファイアンスできる、というのが、そのカラクリです。