新たな国債の買い手は誰になるのか? 

しかし、今やその状況は大きく変わってきました。

まず、異次元金融緩和によって、日本国債の最大の保有者が日本銀行になりました。「国庫短期証券」と「国債・財投債」を合わせた日本銀行の保有比率は、2010年3月末が8.8%だったのに対し、2024年12月末には46.3%まで上昇しています。

一方、2010年3月末時点で最大の保有者だった預金取扱機関は、当時42.2%も保有していましたが、2024年12月末時点では11.1%に過ぎません。相当程度、預金取扱機関から日本銀行に、保有している日本国債がシフトしたことを意味しています。

ただ、これからは徐々に、日本銀行が保有する国債を、預金取扱機関などに移していかなければならないのですが、ここが極めて不透明です。

なぜ、かつて預金取扱機関が大量の国債を購入できたのかというと、それだけ潤沢な預金があったからです。2025年5月時点の全国銀行の総預金残高は952兆9190億円ですが、2000年12月時点のそれは475兆6472億円です。この25年間で約2倍になっていますが、普通国債の残高は2000年が359兆円程度だったのに対し、2025年の見込み額は1129兆円です。優に3倍へと膨らんでいるのです。これは、国債を買ってもらうための原資の増加スピードに比べ、国債発行のスピードが上回っていることを意味します。

しかも、これから先を考えると、恐らく超高齢社会によって預金の取り崩しが増えるため、徐々に預金の伸びは落ちていくでしょう。それは保険・年金基金、公的年金も同様です。これまで蓄積した資産を取り崩して生活する高齢者が増えるにしたがい、預金や保険、年金などの取り崩しが増えるため、国内における国債の買い余力が落ちていく恐れがあります。

そうなった時、新たな国債の買い手は誰になるのかというと、恐らく海外投資家です。実際、「国庫短期証券」と「国債・財投債」を合わせた海外投資家の保有比率は、2010年3月末の5.5%から、2024年12月末には11.9%まで上昇しています。

このように、日本国債の保有者における海外投資家のプレゼンスが上がることによって、その動向が日本国債の消化に影響を及ぼします。当然、海外投資家は海外の格付を中心にウォッチしているでしょうし、その格付が下がったりすれば、日本国債への投資を控える恐れがあります。そうなった時、日本国債のファイナンスに支障を来すリスクが生じてきます。

また、もし仮に日本国債の格付が、S&P格付でBBB+まで下がったら、スペインやポルトガルよりも低くなってしまいます。日本国債の格付低下は、日本という国に対する信用の低下でもあるので、円が売られて再び円安が加速し、さらなるインフレを引き起こさないとも限りません。

こうしたリスクが顕在化する恐れがあることを考えると、冒頭でも触れたように、政府目標とほぼ変わらない程度のインフレで、安易に給付金を出そうとする自民党の見識を、疑わざるを得ないのです。