憧れの先輩に瓜二つ…スタジアムでの運命の出会い

都心からメトロで40分ほどのスタジアムには、日本代表戦でも何度か行ったことがありました。八木さんの贔屓のチームはファンが熱いことで有名で、ホームのこのスタジアムでの試合は常に、広大な空間がユニフォームカラーの赤一色に染まります。

その日は同じ関東のチームとの上位対決でした。そして、試合が始まってそれほど時間が経たないうちに、私の目はホームチームの左サイドハーフに釘付けになりました。

長身のドリブラーで、目力の強いハーフ顔。まさに私のどタイプでした。実は高校時代、1学年上の先輩に憧れてサッカー部のマネージャーになったのですが、その選手は、細マッチョな体型も顔も、憧れの先輩に瓜二つでした。

その日のゲームはスコアレスドローに終わったのですが、はっきり言って試合の流れなど、ほとんど見ていませんでした。左サイドハーフの選手の姿しか目に入ってこなかったからです。

速攻で選手のSNSをフォローしました。そして、試合のある週末は、八木さんとスタジアムまで足を運ぶようになりました。出勤日が増えてきた夫は土日も仕事だったので、黙って出かけることに特に罪悪感はありませんでした。

八木さんは応援するチームの試合をほぼ全て現地で観戦していました。平日ゲームのある日は取材も入れない徹底ぶりです。週末は遠征にも出かけていて、「遠征先の方が選手との遭遇率が高い」とシーズンを通してホテルの予約を入れていました。「NO SOCCER NO LIFE」をモットーに、出版社の給料を全てサッカーに注ぎ込んでいたのです。

一方の私は編集アシスタントで、給料は八木さんの半分にも届きません。シングルひとり暮らしの八木さんと違って家には夫もいますから、ホームと都内や横浜の試合に行くのが関の山です。

Jリーグの推し活はそれなりにお金がかかります。チケット代や交通費、推しのユニフォームやグッズ代、さらにスタジアム内外での飲食代を加えると、毎月軽く7万~8万円は超えてしまいます。これに遠征費が加わったら、私の給料では到底賄いきれません。

そんな矢先、悲報が届きました。私の推しが急きょ、関西のチームに移籍することが決まったのです。

●この移籍が小中さんを経済的破綻へと導く転換点に――関西への遠征費用、膨らむリボ払い、そして夫にも言えない秘密を抱えながら、なぜ彼女はスタジアム通いを止められなかったのでしょうか。後編【結婚後にハマったJリーグ、月5万円の遠征費用がかさみリボ払い地獄に…貯金が尽きても止められない危険すぎる推し活の末路】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。