同僚からサッカー観戦の誘いを受ける

配属されたのはビジネス誌の編集部でした。本当なら旅行関係の記事を扱うライフスタイル誌が良かったのですが、贅沢は言えません。

そこの編集部員だったのが3歳年上の八木さんでした。40~50代のおじさん中心の職場の中、八木さんは原色の多いクセ強めのファッションで、取材のアポをすっぽかしたり、デスクの電話を平気でスルーしたりと、「仕事よりプライベート」の姿勢が見え見えでした。

正直あまり関わり合いたくない人だったので、最初は距離を置いていました。ところが、私が働き始めて2カ月ほど経った時、向こうから声をかけてきたのです。

「小中さんって、サッカー見る人? 今週の土曜日のチケットがあるんだけど、一緒に行かない?」

私は高校時代、サッカー部のマネージャーをしていました。夫は当時のサッカー部員です。当然二人ともサッカー好きで、結婚する前には何度か日本代表の試合を見に行ったこともあります。恐らく、八木さんは私が近くの席のおじさんと話をしていたのを聞いていたのだと思います。

コロナでずっとインドアの生活をしてきたので、久しぶりのスタジアム観戦も悪くないなと思いました。それで、つい、「行きます!」と言ってしまったのです。