◆長期の積立投資でも「純金」が「S&P500」に勝利

中国銀行の売れ筋で第6位に飛び込んできた「三菱UFJ純金ファンド」は、その名前のとおり「純金」の値動きに連動するパフォーマンスをめざすファンドだ。同ファンドでは連動をめざす金価格として大阪取引所における金1グラムあたりの先物価格をもとに現在価値として算出した理論価格を用いている。このため、金の国際価格として多くの投資家が参照する「ロンドン貴金属市場協会 (LBMA) のフィキシング(値決め)」(現物価格)や「ニューヨークの金先物取引価格」とは異なるが、現物価格と先物価格がおおむね1つの価格に収れんするように、国際価格と国内価格も同じように1つの価格に近づく性格がある。

「三菱UFJ純金ファンド」と外国株式インデックスファンドの中で一番人気の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を毎月月末に1万円ずつ積立投資を行ったとすると、2018年7月をスタートとして2025年4月まで約7年(82カ月)の積立投資評価額は、投資元本82万円に対して「三菱UFJ純金ファンド」が約172万円、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は約149万円という結果になった。2018年7月にスタートして2018年10月から2019年2月まで、また、2019年5月から同10月まで、2020年1月から同10月までなど、「三菱UFJ純金ファンド」の評価額が「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を上回る期間はあったものの、2020年11月以降は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が圧倒的に良い成績だった。その状況は2025年1月までは継続していたが、2月以降に「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の運用成績が悪化し、3月に逆転し、4月に優劣の差が拡大した。

成長する資産の代表格である米国株式「S&P500」を長期の積立投資の結果が上回ったことの意義は大きい。株式に勝る成長期待が純金にはあるということになる。従来は長期投資において株式に勝る成長資産はないという考え方を前提として投資戦略は考えられてきた。現在の純金優位の状況が継続するものであれば、いまだに純金を投資資産として組み入れていない投資家の間にも「純金を株式や債券と同様に長期の投資資産として組み入れよう」という動きが広がるだろう。2025年の変化は資産運用業界に大きな変革につながるかもしれない。今後の純金価格の推移に注目したい。

 

執筆/ライター・記者 徳永 浩