後輩が結婚
「そっか。美弥子ちゃん、とうとう結婚するんだ」
ランチに行きませんかと後輩の美弥子のほうから誘ってきたので、何かと思っていたら結婚の報告だった。
「そうなんです。部屋の目立つところにゼクシィ置いて、友達のウェディングフォト散々見せて、いろいろやったんですけど、結局決め手は子供でした。あ、こっちはまだ誰にも言ってないのでオフレコでお願いします」
美弥子はうれしそうに自分のお腹をさする。その様子は、素直にいいなと思える。
「分かってるよ。予定日は?」
「10月です。できる限り働きたいから、産休は9月に入ってからのつもりです」
「そっか、そっか。寂しくなるなぁ」
「麗香さんは結婚の予定とかないんですか? 綺麗だし、仕事できるし、周りがほっとかないんじゃないです?」
「いやいや。周りはほっといてほしい男ばっかだもん」
麗香は今年で35歳になる。今は付き合っている人こそいないが、恋愛に消極的というわけでもない。結婚も出産もしたいとは思っているし、親に孫の顔でも見せて安心させてやりたいとも思う。だが、自分にふさわしいと思える相手がいなかった。
会社の同僚は論外だ。収入もたかが知れているし、何より麗香より不出来だ。お互いに尊敬しあえるようなパートナーでなければ、関係は長続きしない。
「なんかどいつもこいつも頼りないですよね、みんな。彼だって、私が頑張ってようやく結婚にこぎつけたって感じで。最初は全然はっきりしなかったですし。この子が来てくれなかったら、どうなってたんだろうって考えるだけでゾッとしますよ」
「たしかにねぇ」
麗香はうなずきながら、出会いを待っていてはだめなんだろうなと思い直していた。