激増するマンション住戸内の孤独死

また古くからの住人の多くで高齢化が進行します。最近はマンション住戸内での孤独死が激増しています。内閣府「令和6年版高齢社会白書」によれば、東京23区内における1人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡数は2022年で4868人。この数は10年前の2012年で2733人でしたので、何と1.78倍に増加しています。このうち何人がマンションの自宅内での出来事であるかはわかりませんが、マンション管理会社では、こうした孤独死は珍しいことではなく、死亡後に空き住戸化する事例も目立つと言います。

住戸内での孤独死については、これまで該当住戸を売却する際に、不動産売買取引で定められる重要事項説明書にその事実を記載する必要がありましたが、あまりに事例が増えたため、現在は記載事項から外されています。それでも相続人がリフォームなどを施して売却活動を行なえばよいですが、孤独死の場合は相続人がいない、相続人と不仲であるなど、相続人が空き住戸化したマンションに興味を示さないケースがほとんどです。

実務的にはローンなど残債がある場合には金融機関が差し押さえて売却して債権回収を行ないますので、金融機関任せでもかまいません。しかしローンなどがなく、相続人全員が相続放棄した場合には、管理組合が相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立て売却活動を行ないますが、売却できない、売却できても清算人への報酬分の金額を回収できないなどの事例が増えています。

築年数が古いマンションでは管理組合役員の高齢化により、役員のなり手がいない、新しい問題に対処できないなど、組合としての対応に限界が生じ始めています。孤独死住戸の処分や空き住戸の管理などに労力を費やす動機も少なく、マンション管理はますます不十分なものになっていくのです。

新・空き家問題――2030年に向けての大変化

 

著者名 牧野 知弘

発行元  祥伝社

価格 1,012円(税込)