税制優遇が受けられるNISAとiDeCoの2つの制度があります。
NISAは運用益が非課税で、自由度が高いのが特徴です。一方、iDeCoは掛金が所得控除の対象になりますが、60歳まで引き出せません。
では、それぞれの制度をどう活用すれば、効率的に資産を増やせるのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの藤川太氏が、NISAとiDeCoの違いと使い分けのポイントを解説します。(全3回の1回目)
※本稿は、藤川太著『2025年度最新制度対応版 世界一かんたんなNISAとiDeCoの得する教科書』(宝島社)の一部を抜粋・再編集したものです。
長い目で見て積立額を決めよう
iDeCoは運用期間中だけでなく、積立時、受取時にもそれぞれ節税メリットがあります。
積立時には、その年中に積み立てた掛金はすべて所得控除することができます。たとえばiDeCoで月1万円の積立をしている場合12万円を所得控除でき、その分所得税や住民税が安くなります。
iDeCoの受け取り方には「一時金」「年金」「一時金+年金」の3種類があり、受け取り方によって税金の計算方法が違います。一時金で受け取る場合、退職所得控除が使え、退職金と同様の計算になります。年金受け取りの場合、公的年金控除を使い、公的年金と同様に扱われます。受取時には、税金がかかる可能性はありますが通常の所得よりも優遇された扱いとなっています。
実際にiDeCoを活用するとどの程度有利になるのかは、「iDeCo公式サイト」の「簡単税制優遇シミュレーション」で計算できます。仮に、35歳で年収500万円の会社員が、月1万円を積み立てる設定で計算すると、30年後の65歳までの積立総額は360万円になります。この間に所得税36万円、住民税36万円、合計72万円の節税効果があると算出されます。積立時に利用できる所得控除によって、これだけ大きな節税効果を得られるのです。
NISAも運用益が非課税になりますが、これは利益が出た場合のメリットであり、損が出た場合には意味がありません。ところが、所得控除による節税メリットは、利益に関係なく確実に得ることができます。これだけ大きな節税メリットが組み込まれた制度になっているのは、老後資金に特化した制度だからこそといえます。
それだけに、積み立てた資金は60歳まで原則として引き出すことができません。月1万円でも、10年で120万円、20年で240万円にもなります。教育費やマイホーム購入資金のような大きなイベント資金が、いつ、いくらかかるのか想定し、将来のやりくりができる範囲でiDeCoの積立額を決めるとよいでしょう。