近年、都市部の不動産価格は大きく上昇しています。一方で、日本各地で空き家の増加が社会問題にもなっています。
少子高齢化、金利上昇、在留外国人の急増など、大きな変化のなか、不動産業界は過渡期を迎えているようです。不動産コンサルタントの長嶋修氏は「不動産に関する〝常識〞が変わりつつある」といいます。
多くの人にとって不動産は、一生に一度の大きな買い物です。後悔しないためにも、不動産の新常識を長嶋氏に解説してもらいます。(全3回の2回目)
●第1回:【2030年の不動産】外国人数は想定を上回るペースで増加…中国人富裕層に人気の移住先は?
※本稿は、長嶋修著『2030年の不動産』(日経プレミアシリーズ)より、一部を抜粋・再編集したものです。
好立地マンションの供給がほとんどなくなる
今、都市部の不動産選びでもっとも重視されているのは利便性です。駅からの距離は近ければ近いほどよく、一等地の場合はどんなにボロボロの建物でも、駅から徒歩1分などの好条件であれば買い手がつきます。これから不動産買う場合も、出口戦略を意識するのであれば、なるべく駅に近い物件を選ぶと値崩れしにくいでしょう。
ただし、エリアごとに濃淡はあります。たとえば、都内屈指の人気エリアである東京都港区の場合、最寄り駅から15分くらい離れている物件でも買い手はつくでしょう。港区の高級住宅街は駅から遠いところにもあります。一方、同じく都内23区内であってもたとえば千葉寄り・埼玉寄りのエリアになると、最寄り駅から徒歩15分では、将来的に売りたくなっても売れないリスクが大。最低10分、できれば7分以内で駅まで行けるエリアで物件を探すべきです。
駅周辺といえば戸建ではなくマンションという選択になる可能性が高いですが、都心部の駅周辺には新たにマンションを建てられる土地がほとんどなくなっています。都心から多少離れていても、ターミナル駅や人気のある駅の周辺は同様。すでにできあがっている好立地マンションのストックには限りがあるので、2025年の時点で分譲マンションの良い部屋は争奪戦です。
新築はもちろん、中古でも好立地物件は価格は下がるどころか上昇傾向です。これが2030年頃になると、好立地マンションの供給はほとんどなくなり、あっても手が届かないほど高額という状況になっているでしょう。