小規模企業では初任給引き上げが全体を下回る
大企業に比べて財務的な余力が限られる中小企業や小規模企業では賃上げ意向に違いはあるのか。同調査によれば、「初任給を引き上げる」と回答した企業の割合では、「中小企業」が71.4%と「大企業」(69.6%)より高かった。しかし「小規模企業」は62.2%と全体より8.8ポイント低く、差が見られた。
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調査に寄せられた中小企業の声では、「最低賃金の改定を参考にして初任給の引き上げを行う」(建設)、「大手企業とは違い苦しいが、元々支給額が低いため、物価高に合わせた賃上げを検討」(飲食料品卸売)、など原資の確保に苦しみつつも、物価高騰や最低賃金の改定に合わせて初任給を引き上げるという企業も。
一方で小規模企業からは、「物価上昇や薬価改定により減収減益のため、初任給引上げは行わない」(医薬品・日用雑貨品小売)、など業績の懸念から引き上げを見送るという声もあった。
初任給「20万円未満」は4分の1を切る
同調査では初任給を引き上げる企業が多い結果となったが、実際に初任給の水準はどの程度上がっているのか。調査によれば、2025年度の初任給の金額で最も回答率が高いのは「20万~25万円未満」で62.1%。次いで「15万~20万円未満」が24.6%と続く。初任給「20万円未満」は前年度の35.2%から24.8%へ10ポイント以上も減少。とうとう4分の1を切った。また大手企業で増えている「30万円以上」は0.2%から1.7%へ増加している。
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物価上昇が続く中、新たな人材確保に向け初任給の引き上げは重要だが、既存社員の給与とのバランスや総人件費についても考慮が必要だ。優秀な社員ほど新入社員より給与が低いと会社を辞めてしまう可能性が高まるという研究結果もあるそうだ。
消費停滞、原材料費の高騰などから賃上げ原資を確保することが難しい中、調査からは多くの中小企業が苦しいながらも賃上げを行っていることが読みとれる。中小企業においても価格転嫁が不可欠であり、取引先との関係強化や情報共有、さらには政府や行政の支援策も必要とされるだろう。
調査概要 調査主体:株式会社帝国データバンク 調査名:初任給に関する企業の動向アンケート(2025年度) 調査期間:2025年2月7日~2025年2月12日 調査対象:全国1519社