負債あり世帯における残高の伸びが特に大きいのが株式や投信などの有価証券です。20代は2010年以降、30代も23年には負債なし世帯の残高を上回りました。23年時点の負債あり世帯の残高は、20代が74万円、30代が137万円となっており、負債なし世帯より20万円~40万円多く有価証券を保有しています(図表3)。近年は、負債を抱える若者の方がリスク資産投資に前向きなようです。
【図表3】負債の有無別にみた有価証券残高(20代、30代 2人以上世帯)
2023年時点の平均負債残高は、20代世帯が992万円、30代世帯が1,894万円ですが(本シリーズ第1回 図表1参照)、負債がある世帯に限って集計すると、20代が2,661万円、30代が2,761万円と、2,500万円を大きく超えています。
これだけの負債を抱えていながら、貯蓄残高は負債なし世帯とそん色なく、このうち有価証券残高は負債あり世帯を上回っていることから、近年の負債ありの若年世帯がいかに負債返済と資産形成を両立させているか、いかにリスク資産投資にも踏み込んでいるかがうかがえます。
「負債の返済は資産形成の足かせ」という定説が少しずつ崩れ始めているのかもしれません。
なお、40代以上の貯蓄残高や有価証券残高は、一貫して負債なし世帯が負債あり世帯を上回っており(図表4)、若年層のような「逆転現象」は見られませんでした。
【図表4】(左図)負債の有無別にみた貯蓄残高 (右図)負債の有無別にみた有価証券残高(いずれも40代~60代 2人以上世帯)
次回は、負債大幅増加の一方で貯蓄も増えている若年世帯の家計の状況をもう少し掘り下げます。
●参考記事:返済と資産形成を両立させる“返貯両道”が今ドキ? 「まずは負債返済、資産形成はその後」の定説が崩れ始めた要因は…
(筆者:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 主任研究員 青木 美香)