背景2:若者の持ち家率の高まり

二つめは、若年層2人以上世帯の持ち家率(住宅保有率)の高まりです。

40代以上の世帯の持ち家率はこの30年ほぼ横ばいであるのに対し、若年層の持ち家率は大きく上昇しています。2000年時点では20代で22.6%、30代では44.9%でしたが、23年にはそれぞれ34.7%、70.7%と約2倍に。20代2人以上世帯の1/3強、30代2人以上世帯の7割が自宅を所有するようになっています(図表3)。

【図表3】年齢別 家計の持ち家率(2人以上世帯)

 

(出所)総務省「家計調査」、「貯蓄動向調査」

図表1、2に示したとおり、住宅価格、対年収倍率ともに上昇しているにも関わらず、若いうちから住宅を取得する傾向が強まったのは、低金利やローン手数料の低下、住宅ローン減税など「借りやすい環境」に後押しされた部分もあるでしょう。

背景3:若者の住宅ローンの「借り方」に変化

若年層の住宅ローン残高急増の背景の三つめは、若年層の住宅ローンの「借り方」の変化です。

30代以下の時に住宅ローンを利用して住宅を購入した世帯の「頭金比率」と「借入額」を、現在の年齢別に比較すると、頭金比率はより低く、借入額は大きくなっています。

住宅購入資金は、従来は「頭金が1~3割で残りが住宅ローン」が主流でしたが、頭金比率が徐々に低下し、「ゼロ(頭金なし)」も珍しくなくなりました。

住宅ローン借り入れ時の頭金分布を見ると、現在30代以下の世帯では「頭金ゼロ」が35%、「1割」を合わせると全体の6割を超え(60.5%)、頭金を「3割以上」準備して住宅を購入した世帯は2割強(21.4%)にとどまります。一方、現在60代の世帯が30代以下で借り入れた際には、「頭金ゼロ」は13%に留まり、「3割以上」が4割強(42.0%)を占めていました。若い世代ほど頭金の比率は低くなり、住宅を購入する際のローン依存度が高まっていることが明らかです(図表4)。

【図表4】現在の年齢別に見た30代以下での住宅ローン借入時の頭金分布

 

(注1) 単独ローン、ペアローン合計。
(注2) 頭金比率の合計は、端数処理の関係で100%にならない場合がある。

(出所)図表4、図表5とも三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)

 

住宅価格の上昇や頭金比率の低下に、相対的に借入額が大きい「ペアローン」の利用増加も重なって、30代以下での住宅ローン借入時の平均借入額も増加しています。現在30代以下の世帯では2,999万円で、現在40代の世帯が30代以下の時に借り入れた額より約350万円、現在60代の世帯の30代以下時点での借入額より約700万円も多くなっています(図表5)。

【図表5】現在の年齢別にみた30代以下での住宅ローン借入時の平均借入額

 

次回は、若年層の負債増加のサブ要因と考えられる「奨学金」の実態をみてみます。

●参考記事:新社会人の約半数が「奨学金の返済負担あり」の厳しい現実…若者の負債増加のサブ要因に

(筆者:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 主任研究員 青木 美香)