ビットコイン現物ETFへの投資は、資産形成において“アリ”なのか?

ただ将来、日本でもビットコイン現物ETFが承認されたとしても、個人がビットコインなどの暗号資産に投資する際には、資産形成に適している資産なのかどうかを、しっかり考える必要があります。

“まともな(王道の)”資産形成を前提にするならば、暗号資産はポートフォリオの組入対象にはなりえません。理由は「投資」というよりも「投機」の色彩が濃いからです。

投資も投機も似ている面はあるのですが、違いはフェアバリューを推計できるかどうかです。株式や債券は、発行体の資産価値、負債状況などをベースにして、大まかにではありますが、適正な価値がいくらになるのかを計算できます。株式も債券も、投資家は常にフェアバリューを念頭において、現在の市場での取引価格が割高か、それとも割安かをウォッチしています。

対して、暗号資産はフェアバリューの計測が困難です。別な言い方をすれば、暗号資産はただの通貨に過ぎず、そこに実体価値があるのかと言われれば、ないと言うしかありません。実体価値がない以上、フェアバリューを計測することは不可能です。

このように、実体価値がないものをマーケットで取引すると、どうなるのかというと、取引参加者は価格に資金を投じるようになります。「価格が上がりそうだから買い」、「価格が下がりそうだから売り」ということです。実体価値ではなく価格を売買するのが、いわゆる「投機」です。

投機のマーケットは、値動きが荒くなりがちです。フェアバリューがないので、割安だから買う、割高だから売るといった判断ができず、値上がりしているから買う、買うからさらに値上がりする、逆に値下がりしているから売る、売るからさらに値下がりするといったような動きを誘発しやすいのです。結果、上昇局面では暴騰、下落局面では暴落という極めてボラタイルな値動きになるのです。

このように投機に属する資産を、資産形成の対象にすると、どうなるでしょうか。最大の問題は、計画的な資産形成に支障を来すことです。

20年くらいの時間をかけてじっくり育ててきた資産なのに、極めて短期間のうちに半分以下まで、その価格が暴落したら大変です。60歳になって、それまでに築き上げてきた資産を活用しながら、豊かな老後をなどと計画していた矢先、保有している暗号資産の価格が暴落したりすれば、今後の生活設計そのものを見直さざるを得なくなります。

「持ち続ければいつか値上がりする」と言えるのは、運用する時間がたっぷりある30代、40代の人たちの話です。もし暗号資産をポートフォリオに組み入れるのであれば、極めて投機性が強く、資産形成には不向きであることを理解して、資金を投じるべきでしょう。ただ、それを前提に行うのであれば、ビットコイン現物ETFが日本でも承認されれば、それは強い武器になります。承認されてもいないうちにこのようなことを言うのは、誤解を招きかねませんが、恐らくETFの形になれば、少額資金での投資も可能になると期待できるからです。

ポートフォリオのメインはあくまでも株式や債券、それら伝統的資産を組み入れた投資信託で構成し、少額資金でビットコイン現物ETFを買うのは、ポートフォリオに彩りを加えるという意味で、許容されるでしょう。