三菱アセット・ブレインズが発表する「投信マーケット概況」で「外国株式型」に分類されるファンドの2024年12月の月次資金流入額トップは前月に続いて「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」になった。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は第2位だった。資金流入額トップ15に新たにランクインしたのは第5位に入った「SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)」、第10位の「東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)」、そして、第13位の「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド(成長型)」など、新しい切り口を提示するファンドだった。トランプ新政権が誕生する2025年を見据えて新しいスター候補もまた動き出しているようだ。
◆新顔に「高配当株」「宇宙関連株」「ブルーチップ」
資金流入額ランキングで新たにランクインした「SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)」は、シュワブ米国配当株式ETF(SCHD)に投資し、「ダウジョーンズ配当100インデックス」に連動する運用成果をめざしている。「SCHD」の構成銘柄は25年1月24日時点で、シスコシステムズ4.25%、ファイザー4.24%、テキサス・インスツルメンツ4.12%、コカ・コーラ4.08%、シェブロン4.06%など、成長株の性格が強い「S&P500」とは異なる銘柄群になっている。「S&P500」の主要な構成銘柄である「マグニフィセント・セブン」(アマゾン、アップル、アルファベット、エヌビディア、テスラ、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ)に割高の指摘が強まる中で、投資先を分散しようと考える投資家の受け皿の1つになっている。
第10位にランクインした「東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)」は、これまで物色の中心であった「AI(人工知能)」関連とは異なる成長産業として注目される「宇宙」をテーマにしている。宇宙関連は、第1次トランプ政権にあっても産業振興が図られた分野であり、第2次トランプ政権の主要メンバーにスペースXのCEOであるーロン・マスク氏が入っていることからも、今後の規制緩和などの追い風政策が期待される。また、ファンドの組み入れ銘柄も24年12月末時点で、パランティア・テクノロジーズ4.4%、アクソン・エンタープライズ3.2%、ロケット・ラブ2.6%、クラウドフレア2.2%、レオナルドDRS2.2%など、こちらも「S&P500」の組み入れ銘柄とは大きく異なる銘柄群になっている。
「高配当株」や「宇宙関連株」に投資するファンドが人気化している背景には、昨年まで集中投資されてきた「マグニフィセント・セブン」から、それ以外の銘柄へと投資の向きが分散化されていくという見方が強まっていることを表しているようだ。
一方、第13位にランクインした「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド(成長型)」は米国を中心として世界の市場から「優良企業(ブルーチップ)」を選んで投資するファンドだ。組み入れ上位銘柄の顔ぶれは24年11月末時点で、アップル9.4%、アマゾン9.1%、エヌビディア9.0%、マイクロソフト7.7%、アルファベット6.3%となっており、「S&P500」の上位銘柄と多くがかぶっている。同ファンドの組み入れ銘柄数は279銘柄であり、「S&P500」とは個々の銘柄の組み入れ比率等は異なっている。同じように「グロース株式」というこれまでの米国株高の主流の動きを捉えつつ、「S&P500」を上回る成績をめざすファンドだ。米国成長株投信といえば、これまでは「アライアンス・バーンスタイン」だったが、アクティブ運用の雄の1つに数えられる「フィデリティ」の実力に期待するファンドだ。