「許容範囲で商品を選ぶ」ために必要なこと
その点で、CMの最後にディスクレーマーを一瞬だけ見せる現状はあまりに形骸的だと感じる。たとえば「本商品の運用では元本割れが生じる可能性があります」といった、誰もが聞けばピンとくるワードをより大きく・分かりやすく提示するだけでも、ただの責任回避的な情報提供から一歩進めるのではないだろうか。あとは興味を持った人向けに詳細情報を補足し、どのようなリスクがどの程度あるのかを段階的に示すプロセスを整えれば、投資家としても納得しやすくなるはずだ。
結局、投資家が「自分の許容範囲で商品を選ぶ」ためには、まず“最悪の場合はこうなる”という姿を直感的にイメージできるかどうかが重要だ。タバコのパッケージがリスクを一目瞭然にしたのは、単に怖がらせるためではなく、「自分はそれでも吸うのか?」と問いかける狙いがあった。同じように、金融商品のリスク表示も「本当に自分がそれを受け入れられるか?」を考えるきっかけになるなら、投資家保護と市場の健全化に近づくのではないだろうか。
元本割れリスクの裏にはリターンの可能性がある以上、投資=悪という単純な図式に落とし込むのは不適切だ。しかし、「様々なリスクがあります」と専門用語を羅列するだけで終わってしまう今の状況は、タバコの“小さな注意書き”が空気のように無視されていたころと似ている。だからこそ、最終的にいちばん気になる“自分のお金が減るかもしれない”という懸念を、タバコの警告のように目立たせる意義は大きいはずだ。それでも投資を選択する人にはリテラシーが求められるし、そこが資産運用の本質でもある。
(本記事は筆者の個人的な意見に基づいており、法令解釈等の正確性を保証するものではありません。)