三菱アセット・ブレインズが発表する「投信マーケット概況」で「外国債券型」に分類されるファンドの2024年11月の月次資金流入額トップは「ウエリントン・トータル・リターン債券ファンド(年1回・ヘッジなし)」の約121億円だった。第2位は「同(年4回・ヘッジなし)」の68億円で、第3位以下に「フォントベル・世界割安債券ファンド」の3本が続いた。このトップ5は11月に新規設定されたばかりのファンドだった。前月1位の「先進国米ドル建て債券ファンド2024-10(限定追加型)」、第2位の「日本企業社債ファンド2024-10」もともに10月新規設定ファンドであり、新規設定ファンドへの流入が続いている。
◆新規設定ファンドに資金が流れる
新規設定ファンドが資金流入ランキングの上位を占めるという状況は、既存ファンドに魅力がないことの裏返しだ。2008年の「世界金融危機(リーマン・ショック)」後に続いてきた長い低金利時代のために、インカムゲイン(利息収入)が少なく、キャピタルゲイン(値上がり益)では株式ファンドに圧倒的に劣るという「良いところなし」のイメージが、債券ファンド全般に定着してしまった影響が大きいと言える。実際に過去15年程度の期間は、株式が債券に対して優位なリターンを残し続けてきた。
たとえば、「S&P500(配当込み、円建て)」の過去15年は年率リターン18.2%、「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI) (円)」は同14.2%だ。国内株式の「TOPIX トピックス (配当込み)」でも同10.5%になった。これに対して先進国債券の代表的な指数である「FTSE/シティグループ 世界国債インデックス (除く日本、円)」は同4.6%、新興国債券インデックスの「JPモルガン エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・グローバル(円)」は同8.4%という水準だった。中国の失速によって調子の悪かった新興国株式の「MSCI エマージング・マーケット・インデックス (円)」は同7.5%だったため、新興国株式に投資するのであれば、新興国債券に投資した方がよかったという結果ではあったが、それよりも先進国の株式に投資していれば、圧倒的に高い収益を獲得することができたのである。
一方、2020年3月のコロナ・ショック後の世界協調利下げによってインフレが加速し、そのインフレを抑え込むために欧米の中央銀行は2022年以降に急速な利上げを行った。欧州中央銀行のECBは2024年6月に政策金利を年4.0%から3.75%に引き下げて利下げ政策に転じ、9月には米FRBが0.50%の利下げを実施して政策金利を4.75~5.00%にした。今後は欧米ともに利下げを継続していくものと考えられており、金利低下局面は債券投資にとっては債券価格の上昇が期待される追い風の局面になる。直近に設定された債券ファンドは、この利下げ局面の追い風を受けるファンドとしての期待もあり、人気化しているものと考えられる。