企業型DC加入者がiDeCoを活用するメリット
iDeCoはここ数年で浸透しつつある一方、企業型DCは「わからない」という人が多く、両者を比較検討されることは一般的ではないようです。企業型DCが企業の制度であるため掛金の設定や資格喪失年齢が企業によって異なり、一概に説明できないのも「わからない」要因かと思われます。
企業型DC加入者がiDeCoを活用するためには、まずご自身の企業型DCの概要を確認する必要があります。
企業型DCで確認すべき事項
・選択肢(加入自体が選択制、掛金が選択制 等)
・事業主掛金額(可能であれば、勤続年数比例、給与比例等の計算方法)
・マッチング拠出(加入者掛金拠出)の有無
・資格喪失年齢(60歳か60歳超か)
基本的な考え方
企業型DCで拠出限度額5.5万円まで活用できるのであれば、まず企業型DCを活用しましょう。企業型DCで5.5万円まで拠出していると、iDeCoは併用できません。
ただ、現実には、企業型DCの平均掛金額は1.7万円です(※1)。これはマッチング拠出を実施している人の加入者掛金も含んだ数字のため、多くのDC加入者は拠出限度額5.5万円の半分も使っていない状況です。
DCに拠出できる金額
ご自身でDCに拠出できる金額、つまり60歳まで使えなくても困らない金額を考えます。資金に余裕がない場合は、最低掛金が5,000円のiDeCoよりも企業型DCのマッチング拠出のほうが少額から拠出できるなどの使い勝手がよいようです。
事業主掛金額や他制度掛金相当額(※2)によっても計算方法が異なるため、例で考えてみましょう。
【掛金額別】企業型DCとiDeCoの活用例
例1
〈前提〉事業主掛金額:7,000円、他制度掛金相当額:1.2万円
〈前提に対応した拠出上限〉マッチング拠出:7,000円
iDeCo:2万円
〈判定〉ご自身でDCに拠出したい金額が7,000円未満であれば、企業型DCのマッチング拠出。7,000円以上拠出したい場合はiDeCoを選択しましょう。2万円まで拠出できます。
例2
〈前提〉事業主掛金額:2万円、他制度掛金相当額:なし
〈前提に対応した拠出上限〉マッチング拠出:2万円
iDeCo:2万円
〈判定〉拠出上限額が同じなので、手数料が発生しないマッチング拠出の活用が第一です。ただ、利用したい運用商品が企業型DCにない場合などはiDeCoも選択肢の一つとなります。
例3
〈前提〉事業主掛金額:3万円、他制度掛金相当額:1万円(経過措置を活用)
〈前提に対応した拠出上限〉マッチング拠出:2.5万円
iDeCo:1.5万円
〈判定〉マッチング拠出のほうが多く拠出できるためiDeCo活用よりもマッチング拠出を選ぶのがよいでしょう。
何歳までDCを活用したいか
DCの資格喪失年齢は、法施行時は60歳と決められていました。その後、企業型DCでは事業主の判断により資格喪失年齢の引き上げが可能になりました。
iDeCoでは2022年5月から資格喪失年齢が65歳に引き上げられています。なおiDeCoについては、70歳まで引き上げることも検討されています。
仮に企業型DCの資格喪失年齢が60歳で、かつ60歳以降も厚生年金被保険者として働く場合は、60歳以降はiDeCo加入者になることも積極的に検討するとよいでしょう。
※1「確定拠出年金統計資料2024年3月末」運営管理機関連絡協議会
※2 他制度掛金相当額とは、確定給付型の制度(DBや厚生年金基金、共済制度)の事業主負担分を毎月の掛金に置き換えた金額