~K工房の変身――日本固有の素材で世界の高級家具市場へ~

――「K工房」は、大手家具メーカーの子会社として長年操業していた。職人たちは高い技術とこだわりを持ち、優れた品質の家具を生み出せる。しかし、販売先はほぼ親会社のみ。しかも親会社は低価格路線を採っていたため、K工房は本来の価値よりはるかに安い価格で製品を卸さざるを得なかった。

さらに、親会社は生産拠点を海外の低コスト地域へ移し、国内のK工房は戦略的優先度が下がっていた。そこへ目を付けたのがPEファンドだった。親会社は余剰資本を得て事業ポートフォリオを整理するためにも、K工房の売却に応じた。

PEファンドは親会社からK工房の株式を買い取り、新たに発行された株式も引き受けてK工房へ資金注入を行った。経営権を手にしたPEファンドはすぐに改革を開始。新進気鋭のデザイナーを起用し、これまでの無個性な量産品から洗練されたモダンデザイン家具を開発。「ヒノキ」や「ケヤキ」など日本特有の木材を生かし、それを魅力として海外の高級家具市場へ打って出た。

この戦略は功を奏し、欧米やアジアの高級インテリアブランドやラグジュアリーホテルチェーンから注文が相次ぐようになる。ついには世界的に有名な家具メーカーからOEM※供給の依頼が舞い込む。かつては親会社への安値卸売りに頼るだけだったK工房がグローバルなハイエンド家具ブランドへと成長、収益性は飛躍的に改善した。

数年後、K工房は投資時の数倍の価格で国際的な高級ブランドに売却され、PEファンドは大きなリターンを獲得。K工房は下請け的存在から独立した高品質ブランドへと変貌。職人をはじめ従業員の賃金も上昇し、モチベーションもアップ。さらに、職人を目指す有能な若手が集うようになり、人材面での好循環ももたらされた。こうしてK工房は職人技や日本固有の素材を世界へ発信する新たなステージを迎えた――。

※OEM…相手先ブランド製造