◆新規設定ファンドも依然として米国株頼み?
前月(10月)28日に新規設定された「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(ヘッジなし)」が11月にも355億円の資金流入があり11月29日時点の純資産総額は1079億円になった。SMBC日興証券の専用ファンドだが、わずか1カ月間で1000億円を突破した。「電力需要の拡大や電力市場の変革に伴い恩恵を受けることが期待される、世界の株式に投資を行う」というコンセプトが、近年のAI(人工知能ブーム)の裏側に潜むエネルギー供給不安の問題を想起させる今日性、そして、中長期のテーマである「脱化石燃料」をめざす環境保全のカギを握る技術革新への期待も感じさせる。これまでの市場をけん引してきた「IT(情報技術)」や「コミュニケーション・サービス」といったハイテク企業とは異なる視点で銘柄を選ぶことにも、「ハイテク株は割高」という警戒感を持つ投資家に支持されているのだろう。
一方、11月の新規設定ファンドでは、「外国債券型」の「ウエリントン・トータル・リターン債券ファンド(年1回・ヘッジなし)」がトップ20にランクイン(第19位)したが、資金流入額は約121億円だった。「外国株式型」の新規設定ファンドと比較すると設定規模が小さい。欧米の中央銀行が利下げに踏み出し、当面は利下げトレンドが続くものと考えられ、債券市場にとっては追い風となる投資環境だが、その価値は投資家にはなかなか届かないようだ。
現在の多くの投資家が持っているイメージは、年率40%を超えるような高いパフォーマンスを実現してきた「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に代表される米国株式の運用実績だ。実際に運用報告書に基づいて同ファンドの過去5年の運用実績を決算日(4月25日)基準で振り返ると、2020年がマイナス5.7%だったものの、2021年は49.8%、2022年は23.4%、2023年は2.4%、2024年は43.8%という成績だった。このような高いパフォーマンスを当たり前だと考えてしまうと、「米国株式」以外に投資対象資産がなくなってしまいかねない。ただ、実際に米「S&P500」指数の長期の平均リターンは7%~10%程度のものだ。
国内投資家がみている「S&P500」連動型のインデックスファンドのパフォーマンスは、株価の動きに為替の円安(円高)効果が組み合わされた運用成績になっている。過去に例をみないほどの高いパフォーマンスを今後も期待し続けることはさすがに無理がある。今後の新規設定ファンド、また、既存ファンドへの資金流出入の動きがいつまで現在の「外国株式型」一辺倒が続くのか、その推移を見守りたい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩