前回に引き続き、今回もアクティブファンド投資に関する「常識」を疑います。
【アクティブファンド投資の常識③】
アクティブファンドはインデックスファンドに勝てなくなる?
アクティブファンド(以下、「アクティブF」)投資で幅広く信じられているもう一つの「常識」が、「これからはアクティブファンドの運用実績はインデックスファンド(以下、「インデックスF」)に勝てなくなる。既にその傾向は見られる」というものです。
理由としては、アクティブFの信託報酬などの高いコストとそれに見合わない運用力が挙げられる一方で、「(株式)市場の効率化」が進んでいることが指摘されます。(株式)市場の効率性に関しては他の解説をご参考にしていただくとして(*1)、ここでのポイントは、
- ・アクティブFが劣勢なのは市場の効率化が進んでいる米国市場(前回図3)
- ・米国市場でのアクティブFの不振の大きな理由は、株式市場の効率化と考えられる
- ・株式市場の効率化は後戻りしない。したがってアクティブFの退潮は今後も続き、米国以外の市場にも広がる
- ・既に日本国内市場ではその兆候が見られ、近年はアクティブFの劣勢が続いている(前回図2)
と説明できるかどうか、つまり今後もアクティブFの不振は続くのかという点です。
市場の効率化が大きな理由だとすれば、今後もアクティブFにとって苦しい環境が続くことになります。
(*1) 例えば以下を参照ください。
:企業年金連合会/用語集 https://www.pfa.or.jp/yogoshu/ko/ko04.html
この「常識」は正しいと考えても良いでしょうか?
市場の効率化の影響は否定できないでしょう。その大きさを測定することは容易ではありませんが、何らかの影響は受けているでしょう。ただし、近年は米国を中心とする世界の株式市場が過去にない特別な環境にあったことも事実であり、こちらの方が投資成果に与えた影響は大きいのではないかと考えています。
今後環境が変化すれば、アクティブFの運用にとっての足枷が軽減され、力関係が逆転する可能性も十分にあるのではないでしょうか。
特異な環境にある近年の世界の株式市場
2008年のいわゆる“リーマンショック”以降の世界の株式市場は、以下の3点で特殊な環境にあったといえます。ただし、このような状況が今後もさらに継続すると考える方が難しく、環境が変化すればアクティブFにとって優位な状況が生まれる可能性があります。
(1)世界の株式市場は継続的に大きく上昇
“リーマンショック”後の2009年初来今年11月末までの約15年間で、株式市場は全世界ベースではドル建てで約4.1倍、円ベースでは約6.7倍に上昇しています(*2)。しかも途中で大きく調整することなくほぼ継続して上昇しています。
第3回で述べたように、アクティブFの中には、市場下落時の下値抵抗力に優れているものの、市場上昇時に苦戦するファンドが多く見られます。
15年にもわたる歴史的な継続的株価上昇もアクティブF不振の理由の一つと考えられます。
(*2)MSCI オールカントリー指数 (税引後配当込み)のデータよりお金の育て方調べ
(2)米国の大手IT企業の株価主導で大きく上昇
前述の世界の株式市場の歴史的上昇を牽引してきたのは、 “GAFAM”(*3)と総称される米国の巨大IT企業です。S&P500が5.8倍となる間にGAFAMの株価は10倍から20倍になっています。世界株指数の構成比上位を占めるGAFAMがそれぞれ指数上昇率の2倍から4倍値上がりしているわけです。
(*3)Google (現Alphabet)、Apple、Facebook(現Meta Platform)、Amazon、Microsoftの5社の頭文字をとった略称
アクティブFは困難な状況に直面しました。
指数構成比で上位銘柄の株価が、指数自体を大きく超えて上昇を続ける場合、それらの銘柄を指数構成比率よりもさらに大きなウエイトで保有し続けない限り、指数に勝つことは非常に困難です。ところが株価の割安度を重視するアクティブFの運用者にとっては、それはどこまで上昇しても株価が割安と考えることと同義になり、彼らの投資哲学に反する投資判断となるでしょう。
株価上昇の主役が指数構成比の上位銘柄で、その顔ぶれが長期間固定され、かつそれらの株価上昇率が指数を大きく上回っていることが、アクティブFが指数に勝つことを困難にしてきたといえます。