新しい技術が続々と登場するなか、リスキング(技能の再習得、reskilling)が注目されています。
日本のリスキリング第一人者である後藤宗明氏は、40代で3回のクビ、転職活動では100社以上に落とされる経験をしました。自らの経験をもとに、後藤氏はこれからも必要とされる働き方を手にいれるためには、リスキングが大きなカギを握るといいます。
そこでリスキングにおすすめな4つの成長分野を紹介してもらいます。(全4回の3回目)
●第2回:オンライン会議「設定は周りの人にお任せ」は危険…デジタルツールを使えない中高年に待つ“悲惨な事態”
※本稿は、後藤宗明著『中高年リスキリング』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
グリーン分野
グリーン分野も今後の成長が期待できる分野です。
グリーン分野とは、地球温暖化への対応を成長の機会として捉えた場合に見えてくる、あらゆる可能性(産業分野)を含みます。
例えば、経済産業省は2021年に「グリーン成長戦略」を策定し、成長が期待される14の重点分野として「洋上風力・太陽光・地熱」「水素・燃料アンモニア」「自動車・蓄電池」「半導体・情報通信」「食料・農林水産業」などを選定しています。2050年の経済効果は約290兆円、雇用効果は約1800万人と試算しています。2兆円の「グリーンイノベーション基金」を設立するなどして、これらの分野での企業の挑戦を強力に後押ししようとしています。
海外でリスキリングと言った場合、8~9割は新しく必要となるデジタルスキルの習得を指していることが多かったのですが、ここ数年、欧米で急速に必要性が唱えられているのが脱炭素化に向けたグリーン分野のスキルの習得です。
UNIDO(国連工業開発機関)は、グリーンスキルを「持続可能で資源効率の高い社会で暮らし、社会を発展させ、支えていくために必要な知識、能力、価値観、姿勢のこと」と定義しています。
この分野の最大の課題は、地球温暖化防止など脱炭素化に向けた市場技術開発、新規事業開発、人材育成が急務であるにもかかわらず、その人材が少ないことです。戦略コンサルティングサービスを展開している米国のベイン・アンド・カンパニーの調査では、2030年までに英国では400万人の労働者が「グリーン・リスキリング」を行う必要があると試算しています。また、「Global Green Skills Report 2023」には、世界中で、グリーンスキルを1つ以上持っている労働者は8人に1人しかいないとの調査結果が出ています。こうした調査結果はリスキリングを開始しようと考えている方々には朗報と言えるでしょう。