新しい技術が続々と登場するなか、リスキング(技能の再習得、reskilling)が注目されています。

日本のリスキリング第一人者である後藤宗明氏は、40代で3回のクビ、転職活動では100社以上に落とされる経験をしました。自らの経験をもとに、後藤氏はこれからも必要とされる働き方を手にいれるためには、リスキングが大きなカギを握るといいます。

そこでリスキングにおすすめな4つの成長分野を紹介してもらいます。(全4回の2回目)

●第1回:日本人は6人に1人しかパスポートを持っていない現実…英語の学び直しで得られる「一番大きな財産」とは?

※本稿は、後藤宗明著『中高年リスキリング』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・再編集したものです。

デジタル分野

スイスのビジネススクール「IMD」が最新の「世界デジタル競争力ランキング」を2023年11月に発表しました。これは毎年発表されているもので、アメリカが1位に返り咲きました。2位はオランダ、3位がシンガポール、4位がデンマーク、5位がスイスとなっており、上位の国々は常連国で、早くから国家施策としてリスキリングに本気で取り組んできた国々です。

そして、日本はついに過去最低の32位までランキングを下げてしまいました。私はこの指標を2018年から見ているのですが、当時の22位から10ランクも落ちています。

新型コロナウイルス感染症による影響で、仕事の進め方が変わり、日本でもデジタル化が進んだような感覚がありますが、実はそれは他の諸外国でも同様であり、日本は相対的に降下し続けているのです。APAC地域での評価では14カ国中8位、まさにデジタル後進国としての立ち位置ではないでしょうか。また、分野別ランキングの「人材」では、なんと49位まで下落しているのです。

先ほど、OECDの国際成人力調査の結果をご紹介しましたが、実はもうひとつの評価があります。それは「ITを活用した問題解決能力」という項目です。この項目も日本は世界1位ではありますが、年代別に見ると、中高年は若い世代と比較してOECD平均値に近づく成果となっています。やはり、日本の中高年の課題は、デジタルスキルなのです。

リスキリングを広める活動をしている中で、デジタル化に好意的でない方に時々お目にかかります。多くの場合、「うちの会社には必要ない」というものです。本当にそれが正しいかどうかわかりませんが、さまざまなデジタルテクノロジーを使って何ができるのか、という事実そのもの、活用事例をご存知ない場合が大多数ではないかと思います。

また、10名以下の小企業だから必要ないというお話もありますが、少人数で1人当たりがやらなくてはいけないタスクが多く、負荷が高いからこそ、デジタルを活用した効率化が実は必要です。立ち上げたばかりの数名のスタートアップなどを経験している方には特におわかりいただけるかと思います。

現時点でデジタル分野に関心のない方ほど、一部の専門家によるデジタル分野のスキル習得を軽視されている意見などに誘導されがちです。気をつけなくてはいけないのは、デジタル分野のリスキリングを自ら行っていない研究者のような立場の方ほど、「非デジタル」をすすめます。残念ながらそれは、今起きているテクノロジーの劇的な変化を目の当たりにしていないがゆえに生じる誤った見解です。デジタル側の人たちは、あえてそれを力説しません。それはわかりきっていることでもあり、わざわざお節介に伝える必要がないからです。これから進む労働市場の変化のリアリティを理解しているかどうかの差異は、現在の仕事内容から見える「景色」の違いによって生じます。