資産形成層にとって“ぴったり”とは言えない…!?
では、資産形成層にとって、高配当銘柄を組み入れ、高い分配金を出す仕組みを持った投資信託による運用は、はたして有効なのでしょうか。
資産形成層の運用で重視するべきは、決算日の度に受け取る分配金の多寡ではありません。
大事なのは成長性です。
この点を考えると、「シュワブ・米国高配当株式ETF」という、高配当銘柄を組み入れたETFは、資産形成層の投資対象としては、必ずしも適切とは言えないところがあります。
そもそも、高い成長が期待されるビジネスを営んでいる企業は、配当金を支払いません。これは株主に対して、どのような形で報いるのかということに関係しているのですが、成長著しい企業の場合、優先すべきは少しでも早く、より大きく企業を成長させることにあります。
そして、そのためには手元に豊富な資金を保持しなければなりません。豊富な手元資金を使ってさまざまな投資を行い、少しでも早く、より大きく企業を成長させる必要があるからです。成長の真っ盛りにある企業は、配当という形で株主に報いている余裕など、全くといって良いほどないのです。
しかし、だからといって成長企業が全く株主に報いないというわけではありません。企業が成長すれば、売上と利益が大きく伸びます。そして、売上と利益が伸びれば伸びるほど、株価は大きく値上がりします。売上と利益の伸びは、企業価値の向上とイコールになるからです。つまり成長企業は株価の値上がり益、つまりキャピタルゲインの増大によって、株主に報いているのです。
一方、企業の売上や利益が大きくなればなるほど、一般的に成長率は下がっていきます。10億円の売上を20億円にするのは簡単でも、1000億円の売上を2000億円にするのは至難の業です。なかには売上や利益が大きくなっても、なお高い成長率を維持する企業もありますが、それは極めてまれなケースです。
また産業そのものが成熟すれば、徐々に新規投資の機会も少なくなっていきます。新規投資が少なくなれば、企業は多額の現金を抱えることになります。いわゆるキャッシュリッチ企業になっていくのです。
しかし、現金をたくさん抱え込むと、今度は資本効率が低下して、株価の下落を招く恐れが高まります。結果、成熟段階に入った企業は配当という形で株主に報いようとします。同時に高配当、あるいは増配を何年にもわたって継続できる企業は、景気の良しあしに関係なく着実に業績を維持できる企業であると投資家から評価され、株価が下がりにくくなるメリットも生じてきます。
また高配当銘柄への投資は、投資効率を下げる恐れにつながります。
配当金の原資は、法人税を差し引いた残りの利益です。そして、株主が配当金を得た場合、その配当金にも課税されます。企業は株主のものであり、利益は株主に帰属するものという認識に立てば、株主は本来得られる利益から法人税と、配当課税という二重課税を余儀なくされます。それは言うまでもなく投資効率を下げることにつながります。
このように考えると、高配当銘柄を組み入れた投資信託による運用は、これから資産形成を進めていく人たちにとって、決して最善の選択とは言えなさそうです。「シュワブ・米国高配当株式ETF(SCHD)」が話題になっているのは分かりますが、実際に投資する場合は、そのあたりを慎重に見極めた方が良さそうです。