ご祝儀袋には五万円と書かれていたが中身は空

結婚式の受け付けは、宏太は親友の将人君に、私は8人の中でも一番仲のいい星奈に頼みました。6月の星奈の結婚式では私が受付を務めたこともあり、星奈は快く受けてくれました。

そして、結婚式の当日。二次会から戻ったホテルで宏太と祝儀袋の中身を確認したところ、1つ、空の祝儀袋が見つかったのです。それは舞からのものでした。

念のため、祝儀袋の入ったボストンバッグの中をもう一度確かめ、レストランに電話して式の最中バッグを保管していた金庫も調べてもらいました。しかし、現金は見つかりません。

内袋にはしっかり「五万円」と書いてあり、恐らくは舞がうっかり入れ忘れたのではないかというのが、宏太と私が出した結論でした。

美人で明るくノリのいい舞のことは宏太も気に入っているらしく、「そのうち『ごめん! 中身入れ忘れちゃった』って言ってくるんじゃないの」と楽観的でしたが、私はどうも落ち着かない気分でした。

しかし、受付の将人君や星奈に尋ねるのは、2人のことを疑っているようで気が引けます。

両親にも報告はしましたが、おっとりした母が「真由から舞ちゃんに『入れ忘れてない?』って聞くのは止めておいた方がいいと思う。仮にそうだったとしても悪気があったわけではないし、忙しい中を結婚式に出てくれたんだし」と言うと、父も「そんなことで友情にひびが入ったりしたら大変だろう? 5万円くらいなら、うちが立て替えてあげるから」と同調したため、それ以上は話を続けることができませんでした。

しかし、結婚式から半月が過ぎて新婚旅行から戻った後も舞からは何の連絡もありません。それもあって、新婚旅行のお土産を渡しがてら星奈とランチをした際に、思わず空の祝儀袋の話をしてしまったのです。