さて、ここからは、今後の大統領選で激戦が予想される州について考えていきましょう。

 

アリゾナ、フロリダ、ジョージア、ミシガン、ノースカロライナ、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン。

激戦が予想されるこの8つの州、合計135名の選挙人をどう取るかで勝負は決まるだろうと言われています。ここにネバダ州を加える、そんな意見もあるようです。冒頭の話に戻せば、この中でペンシルベニア州が最後のカギを握りだろうとされている。

ここでふと、私は考えてみました。「なぜ、8つの州が赤と青を行ったり来たりしているのか」と。

こんなグラフを作ってみました。

 

8つの州の失業率をまとめたものです。右端の緑が全米の失業率を表しています。2016年の選挙を見ていきましょう。ヒラリー・クリントンが負けた選挙で「ラストベルト(ミシガン州・オハイオ州・ペンシルベニア州)」という言葉がキャッチフレーズになりました。

この時の失業率を見てみると、共和党が勝った州はたいてい全米よりも失業者が多い州だったと言える結果が出ています。

対してトランプが負ける2020年を見ていきましょう。コロナが明けてリオープンされる前の選挙でした。当時の全米失業率は約6.7%です。グラフをみると、ラストベルトのうち、ミシガン州とペンシルベニア州は全米失業率よりもさらに悪い数値を記録していることがわかります。

特に失業率が高く「取り残された」と言ってよいのがペンシルベニア州ですね。つまり、トランプ大統領になってもラストベルトの失業率は改善せず、むしろ上がってしまった。

「感染症のせいだ」「好き嫌いの問題だ」トランプの敗戦をめぐってはさまざま議論がありますが、結局のところ失業率が非常に重要なバロメーターだったのではないかと私は考えています。

ここからは失業統計を見ながら、今回の選挙について考えていこうと思います。2024年8月の全米失業率は4.2%です。さて、トランプ政権のとき取り残されたペンシルベニア州を見てみましょう。失業率は3.4%と、8%以上あった失業率がバイデン政権の4年間で劇的に改善されています。

ほかにも、アリゾナ州、フロリダ州など、軒並み全米より低い失業率になっている。2016年、2020年とは全く違う状況になっています。つまり、失業率という観点から見れば、ラストベルトにあたる州は現政権への不満を抱きにくいのではないか、そう考えられるのではないでしょうか。

とはいえ、結果を決めるのはアメリカ国民です。10月、11月と選挙は続きます。これから出てくる世論調査も見ながら、アメリカ大統領選挙の行く末を見守りたいと思います。

 

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岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。