――新しく開発が進んでいるものとしてはどのようなものがあるのでしょう。
 多くの企業が意欲的に取り組んでいるものの一例として、大統領選を予測するオルタナティブデータが挙げられます。具体的には、政治広告支出や人口統計情報、センチメンタルなどを分析するオルタナティブデータの提供が進んでいます。

特に注目されているのが政治広告支出を分析するオルタナティブデータです。BtoBのクラウドサービス企業などからデータソースを集めることで、政治広告にかける資金の調達総額を試算する企業が出てきています。Magnaのような、人種や公的申告といった情報を考慮することで最大5年先までの予想支出を報告するサービスもあります。また近年増えているデジタル広告の分野でも、Pathmaticsのような、14万~15万社程度の広告主をカバーして政治関連の広告支出を分析する企業があります。

いわゆる「フェイクニュース」を見抜くオルタナティブデータも開発が進んでいます。例えば、Deception and Truth Analysisのような、テキスト化した最高経営責任者(CEO)のスピーチから「欺いている度合い」を検出するようなサービスがあります。もっともテキストからフェイク情報を検出するのは容易ではなく、現状では正解率は20-50%程度と低いのも実情です。そこで現在は、音声・動画などを用いて発言者の表情や声色を分析し、より正確なデータを導出するための取り組みが見られます。

――個人投資家によるオルタナティブデータの活用状況については、国内外で差はありますか。
 欧米では投資関係のアプリが充実しており、オンライン上で個人投資家のコミュニティーが広がっています。米国株式についての議論は白熱していますし、おのおのの研究結果をシェアするような場にもなっています。シェアされる情報は伝統的指標のみならずオルタナティブデータにも及びますので、オルタナティブデータに関する情報に触れる機会が多いのです。

日本でも銘柄ごとの売買代金・出来高の内訳や信用取引残高といった東証の売買内訳データをオルタナティブデータとして提供する証券会社が出てきましたが、個人投資家が触れる機会は限られているのが実情です。これから黎明期を迎えると言っていいでしょう。

――オルタナティブデータを巡る日本と海外の違いや、欧米諸国におけるトレンドを理解できました。ありがとうございました。