羽田へは戻らず

那覇への着陸を断念して関空へ着陸すると決まってからは、あっという間だった。2時間弱で飛行機は無事に関空に着陸した。機内では乗客たちから安堵や不満など、さまざまな声が漏れていた。

航空会社は、便の振り替えや、東京方面へ戻るための新幹線や宿泊代を全額負担してくれるそうで、すでに長時間にわたる想定外のフライトで疲れ果てていた夏芽たちは、羽田へ戻る振り替え便を待たずに、降り立った大阪で宿を取ることにした。

預けていたキャリーバッグを受け取ると、すでにいつもの調子を取り戻した敦也が話しかけてくる。

「ねぇ、夏芽って大阪に来たのは初めてだよね? せっかくだからもう、大阪を満喫しようぜ」

「……そうだね。疲れちゃったし、なんかおいしいもの食べたい」

「前に大阪勤務だったときによく通ってた、いい店があるんだよ」

敦也はニッコリと笑って言った。