今後の年金制度改正のポイント

(ポイント1) 国民年金第3号被保険者の廃止

国民年金第3号被保険者というのは、会社員や公務員の配偶者が年金保険料を納めずに基礎年金を受け取る制度で、制度開始当時は夫が会社で働いて納めた年金保険料は専業主婦である妻の分も含まれているという考えのもとにこのような制度になっています。

第3号被保険者数は2022年度末で721万人もいるため、いきなり廃止した場合の影響が大きいとの判断から、これまでも議論には上りましたが廃止にまでは至っていません。

しかし、専業主婦世帯よりも共働き世帯が増えている中で、厚生年金の適用拡大によって徐々に第3号被保険者も減少していくと見られているため、どこかの時点で廃止になる可能性はあると考えられます。

(ポイント2) 加給年金額の廃止

加給年金額は厚生年金の扶養手当とも言われ、65歳になって老齢厚生年金の受給を開始したときに、扶養している配偶者がいた場合、特別加算額も合わせると、配偶者が65歳に達するまで年間で約40万円が上乗せされるという仕組みです。

仮に専業主婦の妻が5歳年下だと、夫が65歳から69歳まで、合計で200万円ほどが老齢厚生年金に上乗せされる計算になります。これも、会社員の夫と専業主婦の妻でその妻が年下という世帯を前提としていることや、妻が240カ月以上厚生年金の被保険者期間があると、夫の老齢厚生年金に加給年金額が上乗せされなくなることから、廃止してはどうかという声が上がっています。

【 加給年金額と振替加算のイメージ 】

筆者作成

(ポイント3) 遺族厚生年金の男女間格差是正

現在の厚生年金の制度では、会社員の夫と専業主婦という世帯をモデルにしているため、夫が死亡した場合に、専業主婦である妻が路頭に迷わないように30歳以上であれば一生涯、遺族厚生年金が受け取れる仕組みとなっています。

一方で、会社員の妻が先に亡くなっても、専業主夫であった夫は55歳以上でなければ受給権が得られず、60歳に達するまで支給停止されてしまいます。

共働き世帯も増える中、専業主婦であっても有期限で遺族厚生年金を受け取る仕組みになる可能性がありそうです。

わが国の人口構成が大きく変化しようとしているなかで、今後、公的年金制度の改正議論がより活発になっていくと予想されますので、しっかりウォッチしていく必要がありそうです。

(執筆 : 花村 泰廣)

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