ファイナンシャル・ウェルビーイング普及への新たな課題

「反響は良かったので、これからも推進をしていきたいと考えていますが、いくつかの課題も出てきました。例えば、金融リテラシーのある人に対してはどういうアプローチをすべきか、また、講座の事前告知のやり方はどうすべきかといったことです」

社員向けにセミナーなどの情報発信をするサイトはあるが、必ずしもすべての社員に情報が共有されているとは言い難い状況にあるという。そうした社内の情報格差を埋める手法が必要になってくる。

より本質的な問題としては、会社がどこまで社員の金銭的・経済的な部分にコミットしていいのか、そのコンセンサスの形成という点があるだろう。会社側が一方的に推進していると受け止められると抵抗感を覚える人もいるかもしれない。「この点に関しては企業や社員という関係性だけで捉える問題ではなく、社会全体の機運みたいなものも影響してくるのではないでしょうか。ファイナンシャル・ウェルビーイングが一定程度、普及することが重要になるのかもしれません。今後はこうした問題にも配慮することが求められると考えています」

SCSKの「健康経営」は、今でこそ社員に共有され、社会的な評価も受けている。しかし、トップダウンで経営理念となってから現在に至るまでに10年近くを要した。理念や言葉だけが先行しても、肝心の社員がついて来られないのではエンゲージメントの向上に資することはない。

「金融リテラシー研修は、1年で終わるものではなく、5年とか10年とか長期的視点で実施していくことで、初めて効果が出てくるものといえます。そういう意味で、ファイナンシャル・ウェルビーイングは、最初のステージに入ったばかりではないでしょうか。社員への情報発信をよりスムーズにし、地道な金融教育を積み上げていくことで、ファイナンシャル・ウェルビーイングを一歩一歩、ステップアップしていけたらと思います」

ファイナンシャル・ウェルビーイングにつながる道のりは緒に就いたばかり。人的資本経営に不可欠の重要な要素となる日を目指してSCSKの取り組みは続いていく。