人的資本経営で改めて注目される「健康経営」

「健康経営銘柄」とは、社員の健康管理を経営的な視点から考えて、戦略的にその向上に取り組んでいる企業のこと。2015年から経済産業省と東京証券取引所が共同で全上場会社の中から毎年選出している。SCSKは2013年から業界に先駆けて「働き方改革」に取り組んできた。そうした先進的な試みが評価され、第1回目から「健康経営銘柄」に選定された。

2015年には「健康経営」の理念を制定し、経営戦略の根幹としている同社。以降さらに一歩進めて、社員が仕事を通じて働きがいや心の豊かさを感じられる「Well-Being経営」を掲げている。そうした数々の施策の結果、SCSKは10回目となる24年まで連続で「健康経営銘柄」に選ばれている。これは国内企業では1社だけだ(2024年8月末時点)。

2023年3月期決算から上場企業を対象に人的資本の情報開示が義務化されるなど近年、人的資本経営への関心が強まっている。伴って「健康経営」についても改めてその先駆的な側面への注目度が高まっている。そうした中、SCSKではファイナンシャル・ウェルビーイングに対する取り組みも始まっている。同社金融事業グループ・事業推進部の嶋野友也氏に聞いた。

当初の目的は社内での金融教育の効果を新規事業に活かすこと

「ファイナンシャル・ウェルビーイングを、現在から将来にわたる金銭的・経済的な不安を解消し、人生を楽しむための生き方ができる状態だとすれば、それを実現するための取り組みはかなり幅広いものになります。すでに福利厚生としてある、退職金制度や積立貯蓄、財形貯蓄、従業員持株会といったものも含まれると思います」(嶋野氏、以下同)。

SCSK株式会社 金融事業グループ 金融事業グループ統轄本部 事業推進部 第一課 課長 嶋野友也氏

だが、今回の取り組みはそうした従来から提供していた福利厚生とは異なるもので、明確なきっかけがあったという。

「当社はこれまで金融領域で独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)向けの金融仲介プラットフォームや、職域向けの資産形成プラットフォームなどを提供してきました。さらに、金融教育関連で新規事業ができないかと検討したところ、社内で社員向けの金融教育を実施し、そこで得られたノウハウや知見などを活かすことができるのでは、と考えたのです。また、人事部主導ではなく、まずは従業員に金融教育の必要性を感じてもらい、社内の機運を盛り上げていきたいという狙いもありました」