社員の仕事のスタイルを考慮した教育プログラム
実践に向けSCSKが導入したのはブロードマインド社の「ブロっこり」という金融教育プログラム。1回目は23年1月から3月まで、2回目は23年11月から24年2月まで実施した。試験的な運用ということもあり、全社員を対象にしたわけではない。受講したい人に応募をしてもらい、そこから選抜した。1回目は約100人の応募から30人を選び、2回目は500人を対象として募集し、応募のあった約100人から30人を選んだ。1回目でベテラン層の関心が高いことが判明したため、2回目はベテラン社員を中心に募集をしたという。
講座の教材は動画がメインで、1講座10~15分の動画を受講者が視聴する形式。1回目は26本、2回目は24本を週2回配信した。テーマは、セカンドライフ、社会保障制度、保険、住宅ローン、介護・相続、年金(公的年金・確定拠出年金)、さらに資産運用全般、NISA(少額投資非課税制度、ニーサ)やiDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)など、社会人に必要な金融テーマを網羅し、専属のファイナンシャルプランナーがチャットを通じて伴走する作りになっている。
「動画形式の講座にしたのは、仕事のスタイルを考えてのことです。契約先の企業で仕事をする社員が多く、それぞれのペースで受講してもらうことを優先しました。週2回の配信ですが、通勤中にスマホで視聴したり、週末にまとめて見ることも可能です。それが功を奏したのか、受講者の7割が全部視聴してくれました」
動画にも工夫がされていた。内容について質問がある人は、チャット形式でFPに質問をすることができる。返答はリアルタイムではないものの次の配信時までには送られてくるので、それを確認することが次の講座を視聴するモチベーションにもなった。
「そうした離脱しにくい仕組みになっていたので、最後まで視聴した人が多かったと思います。チャットは全受講者のうち半数程度が利用し、利用者は期間中平均4~5回やりとりをしていたようです。チャットでやり取りをして、さらに質問がある人は個別にFPに電話相談ができるサービスもあり、こちらは受講者の1割程度が使っていました」
講座の効果には手応え
受講者の反応は上々だったという。
「講座終了後にアンケートをとってみると、漠然としたお金の不安があったけど不安が取り除かれたとか、投資が怖くなくなった、ライフプランの重要性が分かったなどの声が寄せられました。個人的には、ファイナンシャル・ウェルビーイングに少しは近づいたかなと手応えを感じています」
また、テーマとして最も関心が高かったのは年金だった。企業年金については、どの企業でも社員向けの説明会やセミナーを開催しているはずだが、「理解したつもりになっていただけで、重要なところは忘れていたという人が多かったようです。また、税金に関わることも含まれていたので、具体的に参考になったという声も多く、これまでの説明会やセミナーではカバーできなかった部分が把握できました」