前回の記事はこちら

最近のニュースとして、株式市場の大混乱の中で、外務省、金融庁、日本銀行による三者会談が行われました。新任の三村財務官は、日本経済が緩やかに回復しているという見解を示し、市場を緊張感を持って注視していると述べました。

株式市場が大きく下落した際、多くの投資家から「買い時か」という質問が寄せられます。一般的に、株価が大きく下落した後は買い時と考えられますが、慎重な判断が必要です。

メディアは今回の出来事に「○○ショック」といった名称を付けようとしていますが、それが適切かどうかは時間をかけて歴史的な判断をする必要があります。

今回の日経平均株価の3万1,900円の下落が一過性のものかどうかは、株価の動きだけでは判断できません。最終的には日本経済の状況が決定要因となります。日本経済が健全であれば株価は回復しますが、経済が悪化すれば更なる下落も予想されます。

この状況を1987年10月のブラックマンデーと比較する声もありますが、単純な比較は危険です。当時は株価下落後も企業業績が上昇を続けたため、翌年には株価が新高値を記録しました。しかし、現在の状況はより慎重な分析が必要です。

 

株価の動きは基本的に企業の収益に基づいています。金融政策の変更や政治的ショック、戦争などの外部要因で一時的な下落が起きても、企業収益が堅調であれば株価は回復する傾向にあります。

近年では、2015年のチャイナショックやブレグジットショックなどの事例がありましたが、これらの際も企業収益が維持されたため、株価は回復しました。

 

一方、2008年の金融危機の際は、当初はショックと思われましたが、その後リーマン・ショックが発生し、企業業績が大幅に悪化したため、株価の下落トレンドが続きました。

 

バブル崩壊時も同様で、初期の株価下落後も企業業績はしばらく維持されましたが、その後日本経済全体が悪化し、企業収益が大幅に減少したため、株価の長期低迷につながりました。

 

今回の株価下落が一過性のショックなのか、それとも長期的な下落トレンドの始まりなのかを判断するには、少なくとも半年程度の時間が必要です。その間、毎週の経済指標や企業業績を注意深く観察することが重要です。

特に、日本経済に加えてアメリカ経済の不安定さも考慮する必要があります。8月から10月にかけての相場展開を通じて、これらの要因を見極めていく必要があります。

投資家の皆様には、性急な判断を避け、時間をかけて状況を分析することをお勧めします。「秋まで」というのが一つの目安となりそうですが、地道に底値を探る作業が必要となるでしょう。

 

「マーケット・アナライズ」はYouTubeからもご覧いただけます。

公式チャンネルと8月3日 放送分はこちらから

岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。