◆米リセッション懸念で「世界半導体株投資」の人気は?
「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、半導体株の象徴的な存在であるエヌビディアの株価が6月20日に付けた140ドルの高値から下落し、7月末は117ドルで終わるなど、株価上昇の勢いが衰えていることから、今後の展望が見えづらくなっている。これは、7月はトップ10圏外となった「Tracers S&P500トップ10インデックス(米国株式)」にもいえることで、2023年から2024年6月まで市場をけん引してきた「マグニフィセント・セブン(M7)」といわれた米国ハイテク大型株の株高が全般的に一服感がある。
「M7」の株高は、予想を上回る業績を背景に最高値更新を続けてきた。たとえば、5月29日に発表されたエヌビディアの2024年4月期(3カ月)決算は、売上高が前期比3.6倍、営業利益が同7.9倍という大幅な増収増益決算となったこともあって同社株価の6月の上昇につながった。ただ、大幅に業績が拡大すると、そこからさらに業績が大きく伸びるのは発射台の水準が高いだけに難しくなる。米国企業の業績予想によると、S&P500採用銘柄で「M7」と「M7以外」の銘柄で比較すると、2024年の上半期までは「M7」の増益率が際立っているものの、2024年下半期以降は「M7」と「M7以外」の増益率が拮抗する予想になっている。決して、「M7」の成長が止まったわけではないが、際立って成長するという存在ではなくなってきているのだ。
◆景気後退はコントロールされた減速?
加えて、米国で9月にも利下げに転じるという見通しが強まるほどに、米国経済の減速が経済統計に表れるようになってきている。8月1日に発表された新規失業保険申請件数は24.9万件と予想の23.6万件を上回り、継続失業保険受給総数は187.7万件と2021年11月以来の悪化となった。また、7月ISM製造業PMIも46.8と前月の48.5や予想の48.8を下回る悪化となり、これらの数値によって「米国の景気後退(リセッション)懸念が高まった」と受け取られた。
米国はリセッションになっても利下げによって景気を刺激する手段は十分に持ち合わせている。むしろ、5%を超える高い政策金利を維持することによって、景気を沈静化させようというのが、現在の米国中央銀行の金融政策なので、ここでの景気後退はコントロールされた減速ともいえる。ただ、景気が減速する中では、企業が業績を一段と伸ばしていくことは難しくなるため、「M7」の株価、ひいては、「S&P500」などの米国株価指数も、これまでのように勢いよく上昇を続けることもまた難しくなるだろう。今後の株価動向とともに、ネット証券の売れ筋の変化に注目していきたい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩