各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、中国銀行の5月のデータをもとに解説。
中国銀行の投信売れ筋ランキング(窓口販売)の2025年5月のトップは前月と同じ「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」だった。第2位に前月第3位の「ROBOPROファンド」が浮上し、前月第2位だった「ちゅうぎん日経225インデックスファンド」は第10位にまでランクを落とした。「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)」が前月の第7位から第3位にジャンプアップするなど評価を高めている。また、「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド(隔月決算・予想分配金提示型)」が第4位に、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Eコース隔月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」が第8位に順位を上げた。また、「三菱UFJ純金ファンド」が前月第6位から第5位に順位を上げたものの、前月第8位だった「日経平均高配当利回り株ファンド」はトップ10から落ちた。
◆「インベスコ 世界厳選株式オープン」(世界のベスト)の際立つ運用成績
4月の米「解放の日」に発表された関税政策によるショックで世界の株価が大きく下落したことを機に、世界の株式市場の流れが変わりつつあるようだ。現在の状況を「アメリカ例外主義の終焉」と呼ぶところもある。特に、2020年3月の「コロナ・ショック」後に盛り上がった「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」ブーム、そして、2022年11月に生成AIといわれる「chatGPT」が公開されて以降のAIブームにおいて、常に市場の中心にあって市場をリードしてきたのは米国企業だった。米国株式市場が世界の市場の中で別格の存在として意識され、世界の投資資金も米国株式市場に集中することになった。この「米株熱狂」といえるような状態に冷や水を浴びせたのがトランプ政権だったのかもしれない。4月の株価下落で最も大きな下落を記録したのは、AIブームで市場をけん引してきた米国大型ハイテク企業の株価だった。
米国大型ハイテク株が下落することによって、時価総額加重平均を基本とする代表的な株式インデックスも大きく下落することになった。そして、株式インデックスファンドが揃って軟調となる中で、株価下落に抵抗力を見せて市場の注目を集めるようになってきたのがアクティブファンドの一部だ。アクティブファンドの中でも残高が大きく、かつ、パフォーマンスも優れているということで評価を一段と高めているのが「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」だ。その分配金を含んだトータルリターンの推移が分かりやすい「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)」の基準価額は、4月の下落後、5月14日には前年末の水準を回復し、6月12日には前年末比プラス3%超の水準にまで上昇した。「S&P500」インデックスファンドが6月になっても前年末比でマイナス10%程度の水準でもみ合っている中にあって「インベスコ 世界厳選株式オープン」は出色の強さをみせている。
このようなインデックスファンドを上回るパフォーマンスを実現するアクティブファンドの存在は、「フィデリティ」や「アライアンス・バーンスタイン」といったアクティブファンドで実績を示してきな大手運用会社の手腕への期待にもなるのだろう。残念ながら、足元のパフォーマンスは取り立てて良い成績にはなっていないが、ここでインデックスファンドを上回る成績を実現できれば、「アクティブファンド復権」の大きな転機になるかもしれない。これからの動向が注目される。