ネット証券の投信売れ筋ランキングの2024年7月のトップ6は変動がなかった。前月と同様に同率で「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」がトップで、「iFreeNEXT FANG+インデックス」、「楽天・S&P500インデックス・ファンド」、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」が続いた。これら銘柄は、「インデックスファンドによる長期・積立投資」の対象に設定されていると考えられ、市況変動の影響をほとんど受けにくい。前月に新たにトップ10入りした「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は第6位から第9位に後退、「Tracers S&P500トップ10インデックス(米国株式)」は第8位からトップ10圏外に落ちた。その中で、トップ10圏外から「SBI 日本株4.3ブル」が第6位に躍進し、「楽天日本株4.3倍ブル」が第9位から第8位に順位を上げた。

※SBI証券と楽天証券の公開情報に基づき筆者作成


ランキングは、投信の販売額で群を抜いているSBI証券と楽天証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、2社のランキング10位までのファンドの点数を集計し、点数の多い順に並べた。

◆ブル・ベア型が活躍する相場だが、アップダウンに注意

「SBI 日本株4.3ブル」や「楽天日本株4.3倍ブル」は、7月に日本株が上昇し、終値で7月11日に日経平均株価が4万2224円、TOPIX(東証株価指数)で2929ポイントと史上最高値を記録。その後、7営業日連続安などもあって7月26日には日経平均株価は3万7667円、TOPIXは2699ポイントに下落するなど、アップダウンの激しい相場になった。高いレバレッジをかけているブル・ベア型のファンドでは、株価のボトムで買い、ピークで売るという動きができれば最高に良い結果が得られるのだが、そのタイミングを外すと大きな損失になってしまう。

たとえば、「SBI 日本株4.3ブル」の基準価額は、2024年6月末の2万8181円が、7月11日には3万7518円に上昇。ところが、7月26日には2万2183円に下落している。6月末時点で同ファンドを購入した場合、7月11日には投資資金に対して30%を超える収益をあげられたが、そこで売却(解約)せずに保有をし続けていた場合、7月26日時点では一転して20%超の損失になってしまったことになる。

そして、そのまま8月まで持ち越した場合、7月末に日銀が利上げの決定を行ったことなどに反応し、8月1日に日経平均株価が975円安、翌2日には一時2000円を超える下落となった。日本の今後の景気は2024年5月(7月8日発表)まで26カ月連続でマイナスが続いている実質賃金がプラスに転じるかどうかが決め手といわれており、日銀は賃金などの経済統計を見極めるとして政策金利をゼロ%に据え置いてきたにもかかわらず、実質賃金のプラス転換を待たずに利上げを実施してしまった。このような一貫性のない態度は金融市場に動揺を与えるものだ。市場の上げ下げに応じて投資チャンスを迎えるブル・ベア型ファンドは、今後も注目を集める投資手段になりそうだが、市場のボラティリティ(価格変動率)が大きくなりがちなだけに、無理な投資をしないことが肝要だ。