――企業からはコーポレート・カーブアウトのニーズが高まり、投資家のすそ野も広がる中、御社はこのほど国内PEに特化した第5号ファンドを新たにスタートさせました。

カーライルは2000年に日本オフィスを設立して以来、国内のPEに継続的に投資してきました。具体的には、①通信・メディア・テクノロジー、②消費財・小売・ヘルスケア、③製造業・一般産業の3セクターに注力しており、投資総額は4,500億円以上、投資先企業数は累計約40社に上っています。最新の第5号ファンドは今年5月に資金調達を完了し、2020年の前回ファンドの約1.7倍となる4,300億円を集めました。

第5号ファンドの募集に際しては日本企業に対する期待の高まり、とりわけ海外投資家からの引き合いの強さを実感しました。実際、投資家の構成比を金額ベースで見てみると、国内投資家が約3割なのに対し、アジアや中東、北米などの海外投資家が約7割を占めています。

日本企業への熱視線は、決して中国市場の低迷や記録的な円安による一時的な現象ではありません。海外投資家とミーティングを重ねる中で、国内投資家と同じく、あるいはそれ以上に日本企業についてしっかり研究していることがうかがえました。国内よりも海外の投資家のほうが、グローバルに目立たずとも魅力的な日本企業の価値を評価しているのかもしれません。

――日本企業ならではの魅力とは、どのようなものでしょうか。

一言でいえば、ビジネスクオリティの高さです。カーライルは世界全体で4つの大陸に28オフィスを配置し、2,200人を超える専門家チームを抱えて投資活動を行っていますが、日本企業の提供する製品・サービスのクオリティや信頼性の高さは突出していると思います。日本企業にはいつからか「低成長・低収益」というレッテルを貼られてしまいましたが、事業戦略の見直しやM&Aの実施、外部人材の登用といったPEならではのノウハウを取り込むことで、企業価値を大きく高められる可能性を秘めているのです。

――最後に、アセットオーナーに向けてメッセージをお願いします。

日本のPE市場は非常に魅力的ですので(図)、これから拡大はしても縮小はしないと考えています。また、円建て資産のため為替リスクがなく、短期のボラティリティにさらされず腰を落ち着けて運用できる点も、年金基金をはじめ長期投資が前提となる機関投資家にとって非常に魅力的だと思います。

 

ただ課題は、国内のPEプロフェッショナルが絶対的に不足していることです。専門人材が育たなければ、今後いくら優れたPE案件が出てきても運用できなくなりますので、国内市場全体にとって大きな機会損失となりかねません。日本のPE市場をより魅力的なものにしていくためには、海外のみならず国内のアセットオーナーの皆様にも改めて日本のPEを評価していただき、ポートフォリオに加えていってほしいと思います。