このようなボラティリティと株価の関係は、ある程度順繰りに現れる現象です。2023年からの動きを見ると、ボラティリティはかなり循環的に上昇と下降を繰り返しています。ただし、上昇と下降のリズムと、上昇と横ばいのリズムには若干の違いがあります。

 

これらの動きを整理すると、以下のように分けることができます。

①株価上昇・ボラティリティ上昇

②株価横ばい・ボラティリティ低下

③株価下落・ボラティリティ上昇

この1から3のサイクルが繰り返されています。現在は2の状態でボラティリティが低下し、株価が元の位置に戻ろうとしている段階です。

 

今後、再び1の状態が来る可能性はありますが、大きな相場の変化は概ね年に1回程度のペースです。大統領選挙や金融政策の変更など、大きな出来事が待ち構えているため、次の大きな変化はもう少し先になるでしょう。

したがって、現時点で慌てて市場に飛び込む必要はありません。むしろ、下落したところをじっくりと買っていく戦略が良いでしょう。

さらに、上昇速度(60営業日平均上昇率を年率化)という観点からも市場を見ることができます。年初からの日経平均株価の動きを見ると、30,000円から40,000円に近づく過程で、株価の上昇スピードが非常に速くなりました。

 

40,880円まで到達した際、このスピード指標は年率225%程度という非常に高い水準に達しました。これは明らかに「スピード違反」の状態でした。その後、株価は下落してスピード指標も低下し、最終的にはマイナスにまで落ち込みました。

つまり、今は再びゆっくりと相場に参加し始めても良い時期に入ったと言えます。ただし、一度スピード違反を経験しているため、しばらくは自制的な調整が続くでしょう。急激な上昇があれば、自然とブレーキがかかるはずです。

したがって、ここからは一気に相場が動くことはないと予想されます。じっくりと投資判断を行っていくのが良いでしょう。

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岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。