投資信託を選ぶとき、よく目にするのが「売れ筋ランキング」。実際、商品選びの参考にする投資家も多いのですが、ファンドの人気と「儲かるかどうか」は果たして関係があるのだろうか……?と疑問に思う方も少なくないのでは。

「かつての売れ筋ファンドを、売らずにずっとホールドしていたらどうなったか?」を投資信託の評価会社であるQUICK資産運用研究所への取材を通じて検証するシリーズ連載。第1回は、今から10年前の2010年3月の売れ筋ファンドを振り返ります。

2010年3月の売れ筋ファンド・トップ10

2010年3月の月間資金流入額(購入額)のトップ10には、米国REIT(不動産投資信託)に投資をするファンドをはじめ、海外資産に投資をするファンドが名を連ね、現在の売れ筋ランキングに入るようなバランス型ファンドやテーマ型ファンドは見当たりません。

QUICK資産運用研究所の所長を務める清家武氏は、「ランクインしたファンドは、2位を除き、全て毎月分配型ファンド。この頃は長期投資というよりも、分配金が高めの通貨選択型や新興国を投資対象にしたファンドなどのリスク・リターンの高いファンドが人気を集めていた」と振り返ります。

当時は、リーマン・ショック(2008年9月)の痛手を負って間もないころ。分散投資によるリスク抑制効果を売りに人気を集めていたバランス型ファンドが大きく値下がりし、その分散効果が疑問視されるようになっていました。

そんな中、「損失を取り返したい」「リバウンドを狙える運用先はないか」「毎月のキャッシュが欲しい」といった投資家の声に応えるように、リーマン・ショック後の“へこみ”から回復する際のリターンが見込める新興国ファンドや、為替ヘッジの仕組みを活用してより高めの分配金を設定できる通貨選択型ファンドが多くの資金を集めました。

分配金を当時と現在とで比較すると、1位のファンドで1万口当たり75円(現在:35円)、3位で100円(30円)、4位100円(10円)、5位120円(10円)(2位は年1回決算型のため割愛)とかなり差がついており、分配金がいかに高かったかが窺えます。

「投資先の資産や運用方針よりも、分配金の多寡に着目する投資家が多かったのも事実」(清家氏)で、運用実態より高い水準となっている場合も含めて、分配金は全て「利息のようなもの」と説明してしまう販売会社も中にはあったといいます。