出会った日以来のふれ合い
「ミーちゃん、おやつ食べるかい?」
妙子はチューブタイプの猫用おやつをミーに見せた。梅雨に入ったと天気予報が言っているのに、妙子とミーの関係は相変わらずだった。
とはいえ、もうミーの前足はすっかり回復し、ごく普通に歩いたり、食卓に飛び乗ったりできるようになっていた。それでもこの家を出て行かないのは、それなりに気に入ってくれているということだろうか。そう思うと、素直じゃないところまでいとおしく感じられた。
「ほら、おいしそうだね~」
妙子はチューブから少しだけ中身を押し出し、ゆっくりとミーに近づけた。ミーは身体を起こして匂いを嗅ぎ、妙子を見上げた。妙子はほほ笑んでうなずく。もう安心していいんだよと伝えたかった。すると、ミーはお菓子をなめだした。
「あら」
思わず声が出てしまったが、妙子はミーを驚かせないよう慌てて口をつぐんだ。ミーはけがをしてない方の前足で妙子の手を押さえながら、器用にお菓子をなめている。
食べやすくするために本能的にそうしただけだったのかもしれないが、それは出会った日以来のふれ合いだった。