大学には「大学基金」といって、寄付金などの資産を運用し、その運用益を教育や研究に必要な財源に充てる仕組みがあります。

早稲田大学や国際基督教大学(ICU)、東京大学などが有名ですが、その他にも、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運用する大学ファンドが有名です。

特にJSTが運用する大学ファンドは、運用資産の規模が10兆円超という大規模であることから、その創設時には大きな話題となりました。果たして現状はどうなっているのでしょうか。

ざっと説明しますと、JSTは1957年に設立された「日本科学技術情報センター」と、1961年に設立された「新技術開発事業団(1989年に新技術事業団に名称変更)」という2つの組織が、1996年10月に統合してできたものです。両組織とも、特別の法律に基づいて国が設立した「特殊法人」と呼ばれるものですが、特殊法人はかつて官僚の天下り先などという批判もあり、大幅な組織の統廃合が行われました。現在、JSTは独立行政法人という組織形態をとっています。

JSTの大学ファンドが創設された背景は、科学技術やイノベーション分野における日本の研究力の低下に歯止めをかけることにあります。そこで、若手研究者を支援するため、大学等の共有施設、データ連携基盤の整備などを行うため、大学等が連携してファンドを創設し、その運用益を活用して世界レベルの研究基盤を構築するのが、大学ファンドの目的です。

10兆円の運用原資は、以下の形で調達したものです。

・国の一般会計予算からの政府出資・・・1.1兆円
・財政投融資資金・・・4兆円

まずは上記の合計額5.1兆円で運用がスタートし、その後、2022年度中に財政投融資資金が4.9兆円加算され、合計で10兆円規模の運用資金を集めたことになります。

上記のうち、8.9兆円に及ぶ財政投融資資金は、財政投融資債という債券を発行して調達された借金です。したがって返済義務があります。期間40年の長期借入で、2042年度以降、20年という期間をかけて順次、償還されていきます。

また、10兆円の運用資金から得られる運用益は、「国際卓越研究大学」に認定された大学への助成金に充てられます。

国際卓越研究大学とは、大学ファンドの運用益を活用して、世界最高水準の研究が行われることを目指して重点的に支援する大学のことです。公募によって名乗りを上げてきた大学を有識者会議で審査し、選定されます。

第1回の選定では東北大学が選ばれ、正式に認められれば文部科学省から年間約100億円の助成金が支給されると考えられています。