最後に注目したいのがアマゾンの動向です。アマゾンの株価チャートを見ると、ここ2週間、米国の株式市場が高値を更新する中、なかなかついていけていません。NVIDIAの株価上昇にも乗り遅れた形です。アマゾンと似た動きを示したのが、オンラインショップ銘柄で構成されるETF「IBUY」でした。アマゾンはこのETFに含まれていませんが、ほぼ同じような値動きをしています。

これはつまり、オンラインショッピング全般に何らかの逆風が吹いている可能性を示唆しています。クレジットカードの利用限度額の問題や、過剰消費の終焉が影響しているのかもしれません。コロナ禍での巣ごもり需要で業績が大きく伸びた反動が、未だに続いているとも考えられます。

もし米国の消費が本当に悪化してくるなら、こうしたセクターから兆候が表れるのかもしれません。消費財関連のウォルマートなどがいずれ崩れ始めるなら、単なる一時的な現象ではなく、消費全体の趨勢が変化しつつあるサインと受け止めるべきかもしれません。

株式市場はアマゾンに代表されるオンラインショップの苦戦や、ウォルマートの株価にも陰りが見え始めたことから、消費の停滞をある程度織り込み始めているのではないでしょうか。物価高騰を抑えるには景気減速もやむを得ない面があるので、消費のソフトランディングがインフレ抑制の望ましいシナリオだと言えるかもしれません。

また、ウォルマートなどの消費関連銘柄の動向は、低所得層や中間層の消費動向を映し出していると言えます。彼らの雇用や所得が消費に直結するので、消費の失速は低所得層の失業増加にもつながりかねません。雇用や所得の底割れを防ぐためにも、状況次第では利下げなど金融緩和に転じる可能性があります。特に来年の大統領選挙を控えて、政治的な圧力も高まりそうです。

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岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。