注目ニュースは、サンフランシスコ連邦準備銀行のレポートという極めてマイナーなニュースを取り上げます。ISM統計、失業保険統計、雇用統計などから、米国経済がスローダウンし始めているということは既に報道されているため、ここで細かく見る必要はないでしょう。

サンフランシスコ連邦準備銀行のレポートが重要なのは、金利を大幅に上げたにもかかわらず米国の景気が強い理由について言及しているからです。金利をこれだけ上げれば、通常は経済がもっと早くスローダウンし、名目成長と実質成長が止まり、物価も下がるはずですが、なかなか景気が下がってこないのです。その結果、インフレが高止まりしているわけです。

米国経済がこれほど強い理由は大きく2つあります。1つはコロナ後に現金給付を大量に配った結果、コロナ後の宴が続いているということ、もう1つは移民が大幅に増えており、経済が腰の強いものになっていることです。おそらくこの2つの要素が重なり合って、現在の米国景気の強さを作り出していると思われます。

サンフランシスコ連邦準備銀行のレポートは、前者のコロナ後の宴について興味深い内容を述べています(図1)。それによると、個人貯蓄金額の時系列データを見ると、コロナ前は約1000億ドルだったが、給付金が3度にわたって支給されたため、一時的に貯蓄が大幅に増加したのです。一方、コロナ前の5年間の平均的なトレンドから見ると、本来あるべき水準よりも大幅に貯蓄が増えたことになります。

 

レポートではこの差を「余剰貯蓄」と呼び、コロナ後の米国景気を支えた要因の1つとしているのです。余剰貯蓄は一時2兆ドルにも達したのですが、人々はこれを使い切ろうとしました。今年3月についに余剰貯蓄がゼロになり、貯蓄額が元のトレンドに戻ったというのです。

 

このようなユニークな研究は他に例がなく、比較対象がないため、エコノミストにとって非常に興味深いテーマとなっています。ISMの非製造業指数が弱含んでいることと、余剰貯蓄の枯渇が関連している可能性もあります。