農林中金が運用で巨額損失 ゆうちょの状況をチェック

収益のほとんどを運用で稼ぐとなると、心配なのは運用の失敗です。

農林中央金庫は2024年5月22日、今期(2025年3月期)の最終損益が5000億円超の赤字になるとの見通しを発表しました。赤字の主な原因は運用による損失です。

農林中央金庫は資金を外国債券などで運用しています。金利が上昇したことで保有する外国債券の価値が相対的に下がり、価格も下落したとみられます。この処理に伴い今期は大きな赤字となる見通しです。運用の評価損失は2024年3月末で1兆7700億円にまで膨らんでいます。

先述の通り、ゆうちょ銀行も収益の多くを資産運用で得ています。ゆうちょ銀行は約231兆円を運用しており、うち37%を外国債券などへ、19%を国債へ振り向けています(2024年3月)。

もっとも、運用損益はプラスです。農林中央金庫のようにマイナスには陥っていません。評価益は2024年3月末で1224億円を確保しています。

ただし評価益は減少傾向にあります。2021年3月期は約3兆円の黒字でした。評価益は2024年3月期まで4期連続で減少しています。 

運用を主に圧迫しているのはヘッジ費用です。

評価損益の内訳を見ると、デリバティブ取引および時価ヘッジ効果額のマイナスが大きくなっています。これは主に為替ヘッジによる損失です。円安が進行したため為替ヘッジにかかる取引は損失となり、全体の運用を圧迫しました。

【ゆうちょ銀行の評価損益の内訳(2024年3月期)】
・外国債券:3兆3930億円
・投資信託:9881億円
・国内株式:7327億円
・国債:▲8815億円
・デリバティブ取引:▲1兆8250億円
・時価ヘッジ効果額:▲2兆2562億円
※投資信託の投資対象は主に外国債券
※投資信託はプライベートエクイティファンドの評価益1兆1,726億円を含む

出所:ゆうちょ銀行 投資家説明会資料

なお、外国債券は大きなプラスになっていますが、これは金利上昇による価格の下落を円安が上回ったためです。円安の恩恵がない国債では評価損失となっています。農林中央金庫と同じく、金利の上昇はゆうちょ銀行の運用も圧迫すると考えられます。

農林中央金庫が赤字転落を見込む今期ですが、ゆうちょ銀行は増益の計画です。マイナス金利の導入以降減らしていた国債ポートフォリオの再構築を続けており、損益計算上の収益は拡大を見込みます。

【ゆうちょ銀行の業績見通し(2025年3月期)】
・経常収益:非開示
・経常利益:5250億円(+5.8%)
・純利益:3650億円(+2.4%)
※2024年3月期時点における同社の予想

出所:ゆうちょ銀行 決算短信