貸し出しは預貯金の4% ゆうちょ銀行はなにで稼ぐ?

冒頭の通り、ゆうちょ銀行の株価パフォーマンスは同業他社に見劣りします。株価が出遅れる理由は、融資の比重が小さい点にあるとみられます。

金利上昇で銀行株が買われやすいのは、利ザヤの拡大で収益改善の思惑が働くためです。利ザヤとは銀行の調達金利と貸出金利の差を指します。

ゆうちょ銀行の貸し出しは小規模です。国内トップクラスの預貯金を持つゆうちょ銀行ですが、貸出金が預貯金に占める割合は4%程度しかありません。これは他の主要行を大きく下回る水準です。

【貸出金の対預貯金比率(2024年3月期)】
・ゆうちょ銀行:3.6%
・三菱UFJ FG:52.1%
・三井住友FG:64.9%
・みずほFG:58.0%
・りそなHD:67.3%
※貸借対照表ベース(連結)

出所:各社の決算短信

貸し出しが少ないゆうちょ銀行は、利上昇による利ザヤ改善の恩恵は受けにくいと考えられます。これが株価が出遅れる要因の一つとみられます。

では、ゆうちょ銀行はどのように稼いでいるのでしょうか。答えは資産運用です。ゆうちょ銀行は収益のほとんどを運用から得ています。

ゆうちょ銀行は、売上高に相当する経常収益の過半を資金運用収益で稼いでいます。そして資金運用収益のほとんどは、有価証券から得られる利息や配当金で占められています。資金有用収益には貸出金利息も含まれますが、その割合は1%にも満たない状況です。

【ゆうちょ銀行の経常収益の内訳(2024年3月期)】
・資金運用収益:1兆3971億円(52.7%)
・役務取引等収益:1816億円(6.8%)
・その他業務収益:48億円(0.2%)
・その他経常収益:1兆0681億円(40.3%)
※()は構成比
※(参考)資金運用収益の内訳:貸出金利息97億円、有価証券利息配当金1兆3441億円

出所:ゆうちょ銀行 決算短信

経常収益の7%を占める役務取引等収益は、ゆうちょ銀行のサービスの手数料などです。為替や決済、ATM、投資信託の関連手数料などからなります。利益ベースでは為替・決済に関連する手数料が過半を占めます。

【役務取引等の利益の内訳(2024年3月期)】
・為替、決済:892億円(58.9%)
・ATM:373億円(24.6%)
・投資信託:122億円(8.1%)
※()は構成比
※投資信託はゆうちょファンドラップ(投資一任サービス)を含む

出所:ゆうちょ銀行 決算説明資料